改訂新版 世界大百科事典 「タロー」の意味・わかりやすい解説
タロー
tallow
ウシまたはヒツジの脂肪組織からレンダリング法(加熱して脂肪を融出させること。普通は間接蒸気によるドライレンダリング法を用いる)によって製造した脂肪のことで,ウシからのものをビーフタローbeef tallow(牛脂),ヒツジからのものをマトンタローmutton tallow(羊脂)という。普通タローといえば牛脂をいう。アメリカ,カナダ,オーストラリアが著名な産地である。タローの融点は40~46℃で,脂肪酸組成はラウリン酸0.2%以下,ミリスチン酸2~8%,パルミチン酸24~37%,ステアリン酸14~29%,オレイン酸40~50%,リノール酸1~5%でヨウ素価は35~48である。タローを圧搾して得られる油をオレオマーガリンまたはオレオ油といい,硬い固形の脂肪をオレオステアリンという。オレオマーガリンは主としてオレイン酸グリセリドより成り,オレオステアリンはパルミチン酸およびステアリン酸グリセリドより成る。タローは用途がきわめて広く,精製したタローは食用として直接フライ用に,またマーガリン,ショートニングの原料として用いられる。工業用には化粧セッケンの原料として多量に消費される。またタローは直接に,あるいはこれを圧搾してタローオイルとし,潤滑剤として使用する。またタローを加水分解してグリセリンと脂肪酸とし,後者を冷圧して固体の工業用ステアリン酸と液体の工業用オレイン酸とに分離する。ステアリン酸は化粧品など,オレイン酸は工業用セッケン,紡毛油などの製造に用いられる。
執筆者:森田 重広
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報