知恵蔵 「ダイオウイカ」の解説
ダイオウイカ
ダイオウイカは肉食性で、餌とするのは、自分よりも小さな魚やイカ、小動物。ニュージーランド近海の調査ではオレンジラフィーやホキ、ケンサキイカ(アカイカ)などを捕食していることが分かった。天敵はマッコウクジラで、マッコウクジラの胃の中からダイオウイカの軟骨などが発見されている。
生息しているのは、太平洋、大西洋、日本では小笠原諸島など。深海にすんでいるためその詳しい生態は分かっておらず、台風の後などに死がいや弱ったものが沿岸に打ち上げられていた。生きている個体は赤茶色だが、傷がつくと体表面がはがれて白くなる。死んで打ち上げられたものはほとんど白く、アンモニア臭が強い。
2013年に、深海で泳ぐ様子が世界で初めてNHKスペシャルで番組になって以来、一気に知名度は増した。これは、国立科学博物館の窪寺恒己博士らの研究チームとNHKが、「深海プロジエクト」として進めてきた結果である。小笠原諸島周辺の深海でソデイカを餌としてダイオウイカをおびき寄せ、撮影した映像は、海外でも大きな話題となった。
また、NHKのコント番組「LIFE!~人生に捧げるコント~」でお笑いコンビドランクドラゴンの塚地武雅が着ぐるみを着て、ダイオウイカをモチーフとした「イカ大王」を演じて話題を集めており、ダイオウイカという巨大生物が広く認知されることにもつながったと考えられる。
近年、日本海沿岸での目撃情報が相次ぎ、定置網や底引き網にかかっている。富山湾では今冬、富山港周辺に姿を見せ、アマチュアカメラマンが泳ぐ姿を動画でおさめることに成功、国内外に報じられた。また、富山県魚津市にある魚津水族館では学芸員が撮影した動画と実物大の模型が一般公開されている。
ダイオウイカの目撃情報が増えた理由としては、一般人の認知度が高まり、情報提供の機会が増えたと考えられる一方、水温や生態系の変化、海流の流れが変わったことなど、ダイオウイカを取り巻く環境の変化があったと推測できるが、詳しい因果関係は分かっていない。
(若林朋子 ライター/2016年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報