ダフニスとクロエ(読み)だふにすとくろえ(英語表記)Poimenika ta kata Daphnin kai Chloen

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ダフニスとクロエ」の意味・わかりやすい解説

ダフニスとクロエ
だふにすとくろえ
Poimenika ta kata Daphnin kai Chloen

古代ギリシアの恋愛小説。2世紀ごろロンゴスが書いたと伝えられる。全四巻。舞台はエーゲ海レスボス島の田舎(いなか)。山羊(やぎ)飼いに拾われた捨て子の男の子がダフニスの名で育てられ、2年ほどのち、今度は隣の牧場に捨てられていた女の子が羊飼いにみつけられ、クロエと名づけられる。成長した2人は互いに想(おも)いを寄せ、あどけない口づけを交わすようになるが、平和な田園の四季の生活に波瀾(はらん)が起こり、ダフニスが海賊にさらわれそうになったり、戦争で敵がクロエを連れ去ったりする。危うく助けられたクロエに、今度は別の求婚者が現れ、さまざまの危機があるが、結局ダフニスは証拠の品からりっぱな農園主の息子であり、クロエも身分のよい娘であることが判明し、2人はめでたく結ばれる。この作品には古代の物語に共通する要素も多いが、舞台に統一性があり、基調となる牧歌的雰囲気など、他の同時代の小説にはみられない独自の味をもっている。ゲーテをはじめとして近代にも広く愛読され、同名のラベルバレエ音楽やサン・ピエールの小説『ポールとビルジニー』など、古代の小説のなかでは後世に与えた影響がもっとも大きい。

[引地正俊]

バレエ

この物語は、ロシア・バレエ団ディアギレフによって舞踊化され、フランスの作曲家ラベルに音楽を依頼、1912年パリで、ピエール・モントゥー指揮、フォーキンの振付け、ニジンスキーカルサビナ主演で初演された。ラベルの音楽は、単なるバレエ用というよりも、むしろ多彩な管弦楽法を駆使した交響詩とでもよぶべきものであり、これから演奏会用の組曲が二つ編まれている。第一組曲はバレエより早く1911年に、第二組曲は13年に初演された。

[三宅幸夫]

『呉茂一訳『ダフニスとクロエー』(『世界文学大系64』所収・1961・筑摩書房)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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