航空機と航空機との間で繰り広げられる戦闘行為の総称。おもに戦闘機どうしで行われるが、対空兵装を有する攻撃機や爆撃機、ヘリコプターなどによるものも含まれる。
初期の軍用航空機は、偵察、連絡などをおもな任務とするものであり、それらの任務に携わる敵航空機に対する妨害行動として、1910年8月には航空機からの拳銃射撃の有効性を検証するための実験が、米陸軍により実施されたのが空中戦の嚆矢(こうし)とされる。ただし、パイロットが携行する拳銃で敵機を撃墜することは不可能に近く、第一次世界大戦中に機関銃を航空機に搭載するための方法が模索されるようになった。この際、重要な問題となったのが、パイロットが前方を見ながら照準を行い、プロペラに損傷を加えることなく敵機をねらい撃つための技術開発である。パイロットの後方にプロペラを配置するなどの試みもなされたが、むしろ主流となったのは、プロペラの回転と機関銃の発射タイミングを同期させるメカニズムであった。
両大戦間期に軍用航空機は大幅な発展を遂げ、スペイン内戦においては、爆撃機と戦闘機を組み合わせる航空艦隊といった運用概念も用いられるようになり、戦闘機による迎撃、あるいは爆撃機のための援護戦闘が行われるようになった。そして、第二次世界大戦における航空作戦の前哨戦(ぜんしょうせん)ともいえるノモンハン航空戦では、日ソ双方が空中戦における爆撃機数を競い合う状況が生じている。なお同航空戦では無誘導ロケットを航空機に搭載し対空攻撃に用いることがソ連軍により試みられている。また、第二次世界大戦では、イギリスが構築した防空レーダーによる早期警戒支援下での迎撃という新たな運用方法が用いられるなどの進歩もみられたが、同大戦終結までにおける航空機の搭載兵装は、機関砲やロケット弾であり、至近距離での格闘戦が空中戦の主たる形態であった。
空中戦の概念が大きく転換したのは、おもに冷戦期の科学技術の発展と、それによるミサイル、レーダー、指揮管理システムの進歩によるところが大きい。米軍は、1950年代初めに赤外線誘導の短距離空対空ミサイル(AIM-9、サイドワインダー)の開発に着手し、同ミサイルは世界初の誘導弾として1956年に実用化されている。またベトナム戦争では、レーダー誘導方式の中射程空対空ミサイル(AIM-7、スパロー)が用いられるようになったが、命中率の低さから機関砲をF-4ファントム戦闘機に再装備するなどの動きにつながった。その後、継続的な改良を経て、レーダーミサイルの性能も逐次進歩し、現在ではいわゆる「撃ちっぱなし」ミサイルともよばれるアクティブ・レーダー誘導方式の中射程空対空ミサイル(AIM-120、AMRAAMなど)が主流になりつつある。
これら空対空ミサイルの発展に伴い、至近距離での格闘戦から目視範囲外Beyond Visual Rangeでの中距離戦へと空中戦の範囲が拡大されてきている。また、地上や早期警戒管制機(AWACS)などに位置する要撃管制官からの指令に従い空中戦を行うなど、かつてはパイロットや編隊長の判断により実施されていた戦闘要領も、兵器の進歩に応じ変化してきている。なお、刻々と変化する空中戦において、パイロットが高度の格闘戦能力を具備する必要がなくなったわけではない。しかし、空中戦で勝利するための要因としてパイロットの技量が占める比重は、兵器の性能やシステムの連接性といった要因に比べ、徐々に低下しつつあるのも事実である。
現時点では研究段階にとどまっているものの、将来的に無人戦闘機Unmanned Combat Aerial Vehicle(米軍のX-47等)が実用化されるようになれば、空中戦の概念もまた大きく変化するかもしれない。
[村井友秀]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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