翻訳|band
楽団あるいは楽隊と訳す。器楽の合奏団のことであるが,今日ではおもに,管楽器を主体とする合奏団,またはジャズをはじめとする民衆的あるいは民俗的な合奏団(編成はさまざま)を指す語として用いる。
上記の英語あるいはフランス語のbandeは,もともと集団,とくに軍隊のそれを意味していたが,合奏団をこれになぞらえたのは17世紀からで,フランスの〈王の24人の弦楽合奏隊Les vingt-quatre violons du roi〉が〈グランド・バンドLa grande bande〉と呼ばれ,これにならったイギリスのチャールズ2世の楽団も〈The King's Private Band〉と呼ばれるようになった。ここではオーケストラに近い意味であったが,イギリスではやがて,バンドという言葉は〈ブラス・バンド〉〈ミリタリー・バンドmilitary band〉に代表されるようになった。ブラス・バンドは金管合奏(打楽器を含む)の意味である。ミリタリー・バンドは軍楽隊を意味すると同時に,ブラス・バンドに木管楽器を加えた編成,すなわち吹奏楽団を意味した。今日では吹奏楽団(吹奏楽)は単にバンド,あるいはウィンド・バンドwind bandと呼ぶ。
アメリカでは19世紀末に黒人たちの管楽器によるバンド演奏が盛んになり,街頭での行進曲やダンス音楽に始まって,やがてジャズを生むこととなった。ジャズ・バンド以後,タンゴ・バンド,ロック・バンドあるいはダンス・バンドなどのように,バンドという語はポピュラー音楽の分野で,その編成を問わず広く使われている。なおジャズでは,小編成のバンドはコンボcomboと呼んでビッグ・バンドと対比的に扱うことがある。
執筆者:大浜 清
もともと集団を指す言葉であるが,文化人類学の用語としてはもっとも未発達な進化段階の社会組織を意味する。衣食住のための物質文化もきわめて単純であり,また生産,保存貯蔵,運搬などの技術も未発達な集団で,ほぼ採集・狩猟に生計を依存し,動植物資源を追って季節的に移動する。生活単位は夫婦とその子どもからなる核家族で,資源が豊富なときは一時的に30人から100人ほどの集団をつくるが,また家族単位で離散してしまう。旧石器時代以来,採集狩猟生活者の多くはこの生活様式であり,そこではリーダーに率いられる一時的な狩猟集団以上の組織はない。政治的経済的な集団組織は家族をこえて存在しないのが,バンド段階の社会の特徴である。やがて生産力の向上に対応して,親族組織,村落組織などが育ち,リネージ組織や首長制をもつ部族段階に移行する。狩猟民でも北西アメリカ・インディアンのように資源に恵まれた地域では首長制に達しているが,本格的な社会進化は農耕,牧畜の開始による。
→採集狩猟文化
執筆者:米山 俊直
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…バックル形式やフック形式の留具を用いることが多い。バンドbandとも呼ばれるが,これはウエストバンド,帽子のハットバンド,タキシードのカマーバンド(飾り腹帯)のように,衣服や帽子などに付属した独自の形態をしたものを指すことが多い。皮革,織物,編物,金属,合成樹脂などでつくられる。…
…日中はふつう30~90頭程度の集団をつくって移動,採食を行う。この集団はバンドbandと呼ばれ,その構成員は固定的である。夜間の泊り場や水場の付近では,いくつかのバンドが集まって,ときには750頭にも達する大集団をつくることがある。…
…楽団あるいは楽隊と訳す。器楽の合奏団のことであるが,今日ではおもに,管楽器を主体とする合奏団,またはジャズをはじめとする民衆的あるいは民俗的な合奏団(編成はさまざま)を指す語として用いる。 上記の英語あるいはフランス語のbandeは,もともと集団,とくに軍隊のそれを意味していたが,合奏団をこれになぞらえたのは17世紀からで,フランスの〈王の24人の弦楽合奏隊Les vingt‐quatre violons du roi〉が〈グランド・バンドLa grande bande〉と呼ばれ,これにならったイギリスのチャールズ2世の楽団も〈The King’s Private Band〉と呼ばれるようになった。…
…バックル形式やフック形式の留具を用いることが多い。バンドbandとも呼ばれるが,これはウエストバンド,帽子のハットバンド,タキシードのカマーバンド(飾り腹帯)のように,衣服や帽子などに付属した独自の形態をしたものを指すことが多い。皮革,織物,編物,金属,合成樹脂などでつくられる。…
…日中はふつう30~90頭程度の集団をつくって移動,採食を行う。この集団はバンドbandと呼ばれ,その構成員は固定的である。夜間の泊り場や水場の付近では,いくつかのバンドが集まって,ときには750頭にも達する大集団をつくることがある。…
…採集狩猟社会の人口密度は希薄で,食糧資源にもっとも恵まれた環境に住む民族でも1km2あたり1人に満たず,大部分の社会は0.5~0.1人,または場合によってはそれ以下にとどまっている。居住をともにする集団(バンド)の大きさにも限界があり,それは数十人から100人前後までの,親族関係でつながる家族の集合によって形成されている。バンド間には婚姻を通じて親族関係が結ばれているが,バンドを超えたより大きな集団や統合機構は存在しない。…
…装身具が好まれ,女性は首輪,腕輪などをつけ,すすや石灰で化粧する。社会生活の特徴としては,政治的統一のないいくつかの居住域に分かれ,それぞれのグループは多くのバンド(移動集団)に分かれて移動の生活をする。このバンドが政治,経済,社会の重要な単位である。…
※「バンド」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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