ツマグロイシモチ(読み)つまぐろいしもち(英語表記)flagfin cardinalfish

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツマグロイシモチ」の意味・わかりやすい解説

ツマグロイシモチ
つまぐろいしもち / 端黒石持
flagfin cardinalfish
[学] Jaydia truncata

硬骨魚綱スズキ目テンジクダイ科コミナトテンジクダイ亜科マンジュウイシモチ族に属する海水魚。和歌山県白浜、土佐湾、志布志(しぶし)湾、長崎県天草(あまくさ)、慶良間(けらま)列島、八重山(やえやま)諸島など南日本の太平洋沿岸、台湾、中国、フィリピン、ニューギニア島、オーストラリア北東岸など西太平洋に広く分布する。体は長楕円(ちょうだえん)形で側扁(そくへん)し、体高は体長の約33%。吻長(ふんちょう)は眼径よりすこし短い。口が大きく、上顎(じょうがく)の後端は目の後縁下付近に達する。上主上顎骨はない。上下両顎の歯は小さい歯の歯帯を形成し、犬歯がない。鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)と口蓋骨に絨毛(じゅうもう)状の歯帯がある。背びれは胸びれ基底上方から始まり、2基でよく離れ、第1背びれは7棘(きょく)、第2背びれは1棘9軟条で、第1背びれの第4棘は第3棘より長い。臀(しり)びれは第2背びれ中央部下方から始まり、2棘8軟条。胸びれは多くて、16~17軟条。頭部と体の鱗(うろこ)は弱い櫛鱗(しつりん)で、大きくて薄く、はがれやすい。側線有孔鱗数は25枚。鰓耙(さいは)は上枝に1本、下枝に10本。尾びれの後縁は丸い。体色は一様に銀白色で、体側に6本の不明瞭(ふめいりょう)な暗褐色の横帯と、目の下に暗褐色の斜帯がある。第1背びれの上縁は黒い。第2背びれと臀びれの中央部に黒色の縦帯があり、第2背びれの上縁と尾びれの後縁は黒い。胸部から腹部にかけて化学発光型の発光器をもつ。そのなかにウミホタル型の発光素であるルシフェリンluciferinを含有することから、摂取したウミホタルから由来していると考えられている。水深50~80メートルの泥底に生息し、底引網で混獲される。市場では雑魚(ざこ)として取り扱われ、練り製品の原料にされる。最大全長は15センチメートルほどになる。

 2014年(平成26)に、魚類学者の馬渕浩司(まぶちこうじ)(1971― )らはDNAの分析結果に加えて、前鰓蓋骨の腹縁が骨質であることなどの形態的特徴により、本種を長く慣習的に使用されてきたコミナトテンジクダイ属(旧、テンジクダイ属)Apogonからツマグロイシモチ属へ移動した。本属は背びれ第4棘が最長であることで、第3棘が最長のスジイシモチ属Ostorhinchusと区別できる。イシモチは高知県、和歌山県などで使われているこの類の呼称に由来する。

[尼岡邦夫 2022年11月17日]

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