日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウミホタル」の意味・わかりやすい解説
ウミホタル
うみほたる / 海蛍
[学] Valgura hilgendorfi
節足動物門甲殻綱ミオドコーパ目ウミホタル科の海産発光動物。黒潮に洗われる日本の沿岸に限産し、内湾の浅海にすむ。昼間は砂に潜り、夜間に泳ぎ出して死魚などをあさって食べる。体は卵円形の2枚の殻で包まれている。殻長約3ミリメートルで、殻は半透明の飴(あめ)色。腹側の前端部に触角刻とよばれる深いくぼみがあり、そこから触角が出ている。刺激を受けると上唇(じょうしん)にある分泌腺(せん)から発光物質を出し、それが水に触れると酸化して青緑色に発光する。これはルシフェリン‐ルシフェラーゼ反応とよばれる化学反応であるが、よく乾燥したウミホタルを何十年間も保存したあとでも、水をかけると美しく発光する。発光するウミホタル類は世界で4種知られているが、日本からは殻の後端がとがっているトガリウミホタルV. noctilucaも知られている。ウミホタルは魚の頭や内臓を使って集めることができるが、トガリウミホタルは海面を照らすと集まる。
[武田正倫]