改訂新版 世界大百科事典 「ツメガエル」の意味・わかりやすい解説
ツメガエル (爪蛙)
clawed frog
ピパ科ツメガエル属Xenopusに属する水生ガエルの総称。アフリカの中部,南部に6種が分布する。体長10~12cm,体は扁平で,小さな眼が頭頂部に突出している。完全な水生で,後肢の水かきがきわめて発達し,遊泳のほか皮膚呼吸にも役だつ。後肢の内側3本の指には黒いつめがあり,流れの中で体を支えたり自衛に役だつほか,水底の泥をかき混ぜて水生昆虫を掘り出すのにも使われる。とび出した獲物は胴側にある側線で感知しとらえるが,舌を欠くので餌は前肢でかきこむようにして食べる。繁殖力が盛んで,一度に500~2000個ほどを産卵し,汚れた環境にも耐える。人工増殖が容易なため代表種であるアフリカツメガエルX.laevisが日本の各地でも飼育され,生物学・医学用の実験材料や妊娠診断用に用いられ,またペットとしても人気がある。幼生は半透明で,頭部に1対のひげ状突起がある。近縁で体長3cmほどの小型のコンゴツメガエル属Hymenochirusは4種がアフリカ西部に分布し,前肢にも水かきが発達している。
執筆者:松井 孝爾
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報