ツルドクダミ(読み)つるどくだみ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツルドクダミ」の意味・わかりやすい解説

ツルドクダミ
つるどくだみ
[学] Fallopia multiflora (Thunb.) Haraldson
Polygonum multiflorum Thunb.

タデ科(APG分類:タデ科)の多年草ドクダミの名がついているがドクダミ科の植物ではない。根は地中を伸び、ところどころ丸くて堅い塊根となる。茎はつる状に長く伸び、他物に巻き付く。葉は長柄があって互生し、卵状心臓形で先端はとがり、ドクダミによく似た形で長さ4.5~6センチメートル。名は、この葉の形がドクダミに似ているつる草の意味である。表面の葉脈上に小突起があるが、ほかは無毛で質は薄い。葉鞘(ようしょう)は短い円筒状で膜質、長さ2~3ミリメートルで縁毛はなく、小突起がある。8~10月、葉腋(ようえき)に大きな円錐(えんすい)花序をつくり、小花多数開く。花被片(かひへん)は5枚、白または紅色で円形。花期後、3枚は成長して果実を包んで広倒卵形となり、長さ7~8ミリメートル、3翼がある。痩果(そうか)は長さ2ミリメートル、黒褐色で光沢がある。江戸時代に中国から伝わり、現在では日本各地に野生化している。

[小林純子 2020年12月11日]

薬用

漢方では、塊状に肥大した赤褐色の根を何首烏(かしゅう)と称し、鎮静、強精、緩下剤として、老衰神経衰弱不眠症マラリア高血圧症、遺精などの治療に用いる。何首烏とは中国に伝わる長寿者の名で、ツルドクダミの根を粉末にして服用し、長寿を保ったという。なお、生の葉を腫(は)れ物にはると膿(のう)(うみ)を吸い出すことができる。

[長沢元夫 2020年12月11日]


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改訂新版 世界大百科事典 「ツルドクダミ」の意味・わかりやすい解説

ツルドクダミ
Polygonum multiflorum Thunb.

ドクダミに似た葉をもつ,つる性のタデ科の多年草。中国原産で1720年(享保5)に長崎に渡来した。薬用に栽植されるが,各地で野生化している。根はサツマイモのような硬い塊根。大きなものは重さ1kg以上になる。茎は基部は木質,つる性でよく分枝し,長さ数mに達する。互生する葉は心形で,先はとがり長さ3~6cm。葉鞘(ようしよう)は膜質。花期は8~10月,葉腋(ようえき)から円錐花序を出し,多数の小型の花をつける。花被片は5枚,白色で長さ1mm。おしべは8本,花柱は3本。開花後に外側の3枚の花被片は生長し,翼状になり長さ7~8mmで,堅果を包む。堅果は三稜形,長さ2.5mm。乾燥した塊根は漢方で何首烏(かしゆう)とよぶ。エモディンemodinやクリソファノールchrysophanolを含有し,強壮剤,緩下剤として用いられる。何首烏とは,これを服用して長寿を保った古代中国の人名にちなむという。またヤマノイモ科のカシュウイモとは別物である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ツルドクダミ」の意味・わかりやすい解説

ツルドクダミ
Pleuropteris multiflorus(Polygonum multiflorum)

タデ科の多年草。中国原産で古く薬草として日本に渡来したが,各地に野生化している。地下に肥大した塊根があり,茎はつるになり他物に巻きついて茂る。塊根を乾かしたものをカシュウ (何首烏) といい,強壮剤とする。葉の形が先のとがったトランプのスペードの形で,ドクダミに似ていることからこの名がある。夏の終りに,葉腋から大きな円錐花序を出し,白い小花を多数つける。花後に結ぶ実は3稜形で翼があり細長い。

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