不眠症(読み)フミンショウ

百科事典マイペディアの解説

不眠症【ふみんしょう】

睡眠異常の一種。十分に睡眠がとれないことで苦痛を感じる状態。特にその慢性状態をいう。不眠の型により,寝つきの悪い入眠障害,熟眠できない熟眠障害,早く目がさめてしまう早期覚醒,睡眠中しばしば目が覚める途中覚醒などに分類。動脈硬化高血圧神経症躁鬱(そううつ)病統合失調症精神分裂病)などが原因となるほか,騒音や異常気候,身体各部の痛み,かゆみ,頻(ひん)尿などでも起こる。神経では主観的な不眠が多い。治療には原因療法と各種催眠薬の投与。
→関連項目アドルム断食療法バルビタール

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家庭医学館の解説

ふみんしょう【不眠症 Insomnias】

[どんな病気か]
 睡眠覚醒障害(すいみんかくせいしょうがい)(コラム「睡眠覚醒障害」)の1つのタイプで、睡眠が不足するものです。これはもっともありふれた病気の1つで、最近の調査によると、日本人の約4分の1に不眠の症状がみられるそうです(1995年、粥川裕平らによる)。
[症状]
 入眠障害(にゅうみんしょうがい)(横になってもなかなか寝つくことができない)、途中覚醒(とちゅうかくせい)(睡眠の途中で目が覚めてしまう)、早朝覚醒(そうちょうかくせい)(早朝のまだ暗いうちに目覚める)、熟眠障害(じゅくみんしょうがい)(眠りが浅く熟眠感がない)などがあります。
 これらの不眠症状が続いて現われ、本人や家族の人々に対して、著しい苦痛を与えたり、社会生活や仕事のうえで著しい機能障害をもたらしたりする場合に、不眠症と診断されます。
[原因]
 物理的環境因子(騒音、高温、高所など)、化学物質(アルコール、カフェイン、覚醒剤など)の使用などが不眠症の原因になります。また、心の病気(神経症、躁(そう)うつ病、統合失調症など)、神経の病気(認知症、脳血管障害、脳腫瘍(のうしゅよう)など)、その他のからだの病気(内分泌疾患(ないぶんぴつしっかん)、代謝性疾患、がんによる疼痛(とうつう)など)にともなう不眠症もあります。
 このように、特定の物理・化学的原因やさまざまな病気により二次的に発生する不眠症を二次性不眠症と呼びます。一方、原因がはっきりせず、不眠のみをおもな症状とするものは、一次性(原発性(げんぱつせい))不眠症と呼ばれます。
[検査と診断]
 診断、原因を確定するためには、精神医学的な診察や検査、脳や神経系の検査、さまざまな身体的検査を行ない、薬物、アルコールの使用歴や環境についても調べます。また、睡眠を客観的に検査することが必要な場合には、睡眠ポリグラフィ(コラム「睡眠ポリグラフィ」)を行ないます。それにより、ノンレム睡眠、レム睡眠を含む睡眠の量的・質的特徴がわかります(図「健常成人の夜間睡眠経過図」)。
[日常生活の注意]
 昼間に適度な運動や日光浴を行なう、昼寝を避ける、飲酒は適量以下とし、飲みすぎないようにする、夜はコーヒーやお茶などを控え、リラックスを心がける、寝室の明るさ・温度・湿度を適性にし、必要に応じて遮光(しゃこう)カーテンなどを使用する、からだにあった枕(まくら)や寝具を選ぶ、眠れなくても就寝、起床時間をある程度固定し、規則的な生活を送るように心がけるといった点に注意しましょう。
[治療]
 原因がはっきりわかっている場合には、その原因の除去が重要です。さらに、「日常生活の注意」を試みても不眠症が続く場合には、不眠症の治療が必要になります。
 たとえば、睡眠薬を用いた薬物療法、自分で体調をコントロールする自律訓練法、バイオフィードバック法(精神療法のいろいろの「行動療法」)などにより、リラックスを促進させます。
 睡眠薬はこわいと思っている人がいますが、最近は副作用が少なく、快適な睡眠のとれるベンゾジアゼピン系睡眠薬などが数多くあります。専門医と相談し、その指導のもとで適切な薬物を適量服用することをお勧めします。

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食の医学館の解説

ふみんしょう【不眠症】

《どんな病気か?》


〈生活環境の変化やストレス、不規則な生活が原因〉
 病気としての不眠症(ふみんしょう)とは、十分に睡眠がとれない状態が慢性的に続き、日中に眠くなったり、疲れたり、集中力が落ちたりする場合をいいます。
 おもな症状は、眠りにつきにくい、何度も目がさめる、眠りが浅いなど。ストレスや過度の緊張で、対人関係の悪化や生活環境の変化などがきっかけとなることも多いようです。

《関連する食品》


〈トリプトファン、ビタミンB群などを含む食品を〉
○栄養成分としての働きから
 安眠をうながすと考えられている栄養素には、トリプトファン、ビタミンB群、カルシウムがあります。
 トリプトファンはたんぱく質を構成する必須アミノ酸の一種で、体内でセロトニンをつくります。神経刺激の伝達物質であるセロトニンは、睡眠にも深くかかわっています。トリプトファンはダイズ、たまご、牛乳、チーズなどに多く含まれています。
 また、夜に深い眠りを得るためには、日中に脳をよく働かせておくこともたいせつです。アサリやシジミ、レバーなどに多く含まれるビタミンB群は、全般に昼間活動している脳をさらに活発にする効果があるので、日ごろから意識してとるようにしましょう。
 B群のなかでもとくに有効なのがナイアシンです。ナイアシンはカツオ、サバ、ブリといった魚やレバー、鶏ささみなどに含まれています。
 カルシウムにも鎮静(ちんせい)効果があります。食品として摂取したカルシウムの吸収を高める働きをするのがビタミンDです。もっとも効果的なのは、カルシウムを含む食品とビタミンDを含む食品をいっしょに、夕食時にとることです。
 カルシウムは牛乳や小魚、ゴマなどに多く、ビタミンDはサケ、カレイ、ニシン、カジキなどの魚にたくさん含まれています。
 ラベンダーなど、鎮静作用があるハーブを枕もとにおいたり、ラベンダーの精油を入浴剤に利用するのもいいでしょう。
 お酒は浅い眠りを導きますが、短時間で覚醒(かくせい)してしまうので、寝酒にたよらないことがたいせつです。
 また、カフェインを含むお茶やコーヒーなどはひかえめにしたほうがいいでしょう。
○漢方的な働きから
 タマネギには神経を安定させる作用があるといわれています。また、黒豆酒には、鎮静効果があり、不眠に有効です。
○注意すべきこと
 催眠鎮静剤には、アルコール類との併用で作用が増強し、意識喪失(いしきそうしつ)などの重い副作用を起こすものが多いので、禁酒をまもりましょう。

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世界大百科事典 第2版の解説

ふみんしょう【不眠症 insomnia】

自覚的な睡眠困難を慢性的に訴える状態をさす。不眠の原因には,(1)精神的な興奮や不安によるもの,(2)脳動脈硬化症のような脳の器質的疾患あるいは呼吸器疾患,循環器疾患のような身体疾患によるもの,薬物その他の中毒によるもの,(3)旅行や騒音など外部環境の変化によるもの,などがある。また睡眠困難の型には,(1)入眠することが困難なもの(入眠障害),(2)睡眠中途に覚醒するもの(熟眠障害),(3)朝早く覚醒するもの(早朝覚醒),などがある。

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大辞林 第三版の解説

ふみんしょう【不眠症】

十分に眠れない状態が続くこと。神経症・鬱うつ病・統合失調症のほか、体の調子の悪い時、興奮している時などに起こる。インソムニア。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

不眠症
ふみんしょう
insomnia

不眠(睡眠の開始および持続の障害)があり、自覚的な苦痛や社会的、職業的障害が生じている状態をいい、精神疾患、神経疾患、内科的疾患によるもの、精神的なストレスによるもの、神経質な性格によるもの、老人性のものなどがある。頑固な不眠を訴えるが、睡眠の質・量ともにほとんど異常のないものもあるので、診断の際には睡眠の実態をよく調べる必要がある。[大熊輝雄]

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精選版 日本国語大辞典の解説

ふみん‐しょう ‥シャウ【不眠症】

〘名〙 眠れない状態が慢性的に続く睡眠障害の一種。
※湯島詣(1899)〈泉鏡花〉四四「不眠性に罹って、三日も四日も、〈略〉お寝みなさらない事がある」

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内科学 第10版の解説

不眠症(睡眠異常)

(1)不眠症(insomnia)
定義・概念
 睡眠の質や量が十分に得られない状態で,日中の眠気,倦怠感,集中力低下,作業能力低下,居眠りを伴う.
原因・病因
 睡眠に対する過度のこだわりをもち,就寝時刻になると緊張して眠れなくなるのが,不眠症の原因として最も多い.睡眠を妨げる疼痛,かゆみ,頻尿,呼吸苦をもたらす疾患,閉塞性睡眠時無呼吸症候群,レストレスレッグズ症候群,交替制勤務や不適切な生活リズムによる体内時計のずれ,不適切な寝室環境,ストレスや悩み,うつ病などの精神疾患,不眠を生じる薬剤やカフェイン・ニコチンなども不眠症の原因となる.
臨床症状
 入眠困難,中途覚醒,早期覚醒,熟眠感の欠如がみられる.高齢者では睡眠は浅くなり,中途覚醒・早期覚醒の訴えが多くなる.
治療
1)生活指導:
不眠症の原因を取り除くのが第一である.規則正しい生活をする,日中適度な運動をする,寝室の環境を改善する,リラックスできるよう工夫するなど睡眠にかかわる生活習慣や環境因子の改善を図る.
2)薬物療法:
抗不安薬やベンゾジアゼピン系睡眠薬が有効である.睡眠薬は半減期により,超短時間作用型,短時間作用型,中間作用型,長時間作用型に分類される.入眠困難に対しては超短時間作用型や短時間作用型を用い,中途覚醒・早期覚醒に対しては中間作用型や長時間作用型を使う.睡眠薬の筋弛緩作用により閉塞型睡眠時無呼吸症候群を悪化させることがある.長時間作用型の睡眠薬では,翌日に眠気・ふらつきなどの持ち越し効果が出現しやすい.高齢者では短時間作用型の薬剤が望ましい.薬物代謝が遅い高齢者では,薬の効果が蓄積する傾向があるので成人の1/2~1/3程度の少量から始める.[黒岩義之]
■文献
大川匡子,内山 真:睡眠障害.ダイナミック神経診断学(柴崎浩編),pp303-312,西村書店,新潟,2001.

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