不眠症(読み)ふみんしょう

精選版 日本国語大辞典 「不眠症」の意味・読み・例文・類語

ふみん‐しょう ‥シャウ【不眠症】

〘名〙 眠れない状態が慢性的に続く睡眠障害の一種。
※湯島詣(1899)〈泉鏡花〉四四「不眠性に罹って、三日も四日も、〈略〉お寝みなさらない事がある」

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デジタル大辞泉 「不眠症」の意味・読み・例文・類語

ふみん‐しょう〔‐シヤウ〕【不眠症】

よく眠ることのできない状態が続くこと。ふつう、神経症による睡眠障害をいう。不眠障害

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EBM 正しい治療がわかる本 「不眠症」の解説

不眠症

どんな病気でしょうか?

●おもな症状と経過
 不眠症(ふみんしょう)とは、眠りたいと思っているのに眠ることができず、体や脳の疲労をとるために必要な夜間睡眠がとれない状態をいいます。人間の睡眠時間や寝つきには、かなりの個人差があり、年齢によっても違いがあります。日本人の睡眠時間は平均7時間半から8時間とされていますが、実際にはもっと幅があるというのが実情です。ですから、どの程度眠りが阻害されたら不眠症というかは、その人の健康なときの睡眠状態を基準とせざるをえません。
 不眠症はそのおこり方からいくつかのタイプに分けられます。寝つきが悪く、床に入ってもふだんより1時間以上眠れないのが「入眠障害(にゅうみんしょうがい)」です。夜間になんども(少なくとも3回以上)目が覚める場合は「中途覚醒(ちゅうとかくせい)」といいます。ふだんより2時間以上早く目が覚めてしまい、その後なかなか眠れないのが「早朝覚醒(そうちょうかくせい)」です。睡眠時間はそれなりに長いのに、十分眠ったという満足感が得られない場合は「熟眠障害(じゅくみんしょうがい)」といいます。これらのうちもっとも多いのが入眠障害といわれています。
 また、不眠症の続いている期間による分類もあります。1週間以内であれば一過性不眠、1カ月以内であれば短期不眠、1カ月以上であれば長期不眠と分類されます。一般に治療が必要なのは長期不眠ですが、患者さん本人にとってひどく苦痛で、仕事や学業ができなくなるなど、生活に支障をきたすような場合は短期不眠でも治療が必要でしょう。

●病気の原因や症状がおこってくるしくみ
 不眠症は、いろいろな体の病気や心の病気が引きがねとなっておこるものと、はっきりした原因がわからず神経質な性格などが関係しているものとに分けられます。
 不眠の原因となる体の病気としては、痛みをおこす腰痛やかゆみをおこす皮膚炎、夜間に呼吸困難をおこす気管支喘息(ぜんそく)睡眠時無呼吸症候群などがあります。また、脳梗塞(のうこうそく)、脳出血、脳動脈硬化症など脳の病気や高血圧心不全など循環器の病気が原因の場合もあります。
 心の病気としてはうつ病がその代表で、ほとんどの患者さんで不眠がみられます。
 このように原因のはっきりしている場合は、当然ながら原因となる病気の治療が必要です。
 また、はっきりした原因がないのに不眠がおこる場合があり、その大部分は精神生理性不眠と呼ばれるものです。たとえば神経質な性格の人がちょっとした心配事やストレスで不眠を経験すると、「今夜も眠れないのでは」と気になり、緊張するためによけいに眠れなくなります。眠れないことがさらに心配の種になり悪循環をくり返し、不眠が固定してしまうわけです。このような症状が1カ月以上続く場合は治療が必要です。
 このほか、寝酒としてアルコールを飲んでいると、次第に飲酒量が増えて、寝つきはよいものの中途覚醒、早朝覚醒となることがしばしばあります。
 精神的なストレスが原因となっている場合は、そのストレスを緩和(かんわ)するための行動療法をまず行い、それでも改善しない場合に睡眠薬を使って治療するのが一般的です。
 睡眠薬には作用時間の短いものから長いものまでいろいろな種類があるので、不眠のタイプに合わせて使い分けることができます。眠ることができるようになったら、医師の指導のもとに少しずつ睡眠薬を減らして、薬なしでも眠れるようにします。

●病気の特徴
 どの年代でもみられますが、年齢が高くなるほどその頻度(ひんど)が高くなる傾向にあります。不眠に悩んでいる人は多く、世界的な調査では全人口の約10パーセントにのぼるとしています。


よく行われている治療とケアをEBMでチェック

[治療とケア]不眠の原因が体や心の病気の場合は、その病気を治療する
[評価]☆☆☆☆
[評価のポイント] 原因となっている病気がある場合は、その病気の治療が当然必要になります。また、薬物依存アルコール依存症もある場合は、これらの治療が先になります。

[治療とケア]認知行動療法を行う
[評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] カウンセリングなど薬を使わない精神療法を行うことによって、入眠や睡眠時間の延長を得ることが重要です。具体的には、睡眠衛生(睡眠環境を整える)に気を配ったり、リラックス療法を行ったり、眠気を刺激する方法を行ったりします。睡眠衛生を整えるとは、寝具や寝室を眠りやすい環境にする、規則正しい睡眠習慣を身につける、寝る前の飲食や入浴の方法に工夫する、気持ちを切り換える工夫をする、などがあげられます。(1)~(4)

[治療とケア]睡眠薬による薬物療法を行う
[評価]☆☆☆☆
[評価のポイント] 薬物療法は、ベンゾジアゼピン系睡眠薬、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬、メラトニン作動薬に分けられます。それぞれの薬剤を直接比べた研究はあまりありませんが、一般的にはベンゾジアゼピン系睡眠薬のほうが睡眠時間が長い傾向があります。
 ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、多くの研究で夜間目が覚める回数が減り、睡眠時間が延び、睡眠の質が上がったと報告されています。
 非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、作用時間が短いのが特徴です。軽い不眠症に使われることが多いですが、副作用の発現はベンゾジアゼピン系睡眠薬と変わりありません。
 メラトニン作動薬は、睡眠と覚醒のリズムに関係しているホルモンであるメラトニンを増やすことで不眠に対応します。過去の研究では、自覚的な睡眠の質や、睡眠時間が有意に増えたと報告されています。(5)~(8)


よく使われている薬をEBMでチェック

ベンゾジアゼピン系睡眠薬
[薬名]ハルシオントリアゾラム)(9)
[評価]☆☆☆☆
[薬名]レンドルミン(ブロチゾラム)(9)
[評価]☆☆☆☆
[薬名]レキソタン(ブロマゼパム)(9)
[評価]☆☆☆☆
[薬名]デパス(エチゾラム)(9)
[評価]☆☆☆☆
[薬名]サイレース/ロヒプノール(フルニトラゼパム)(9)
[評価]☆☆☆☆
[薬名]ユーロジン(エスタゾラム)(9)
[評価]☆☆☆☆
[薬名]ネルボン/ベンザリン(ニトラゼパム)(9)
[評価]☆☆☆☆
[薬名]ドラール(クアゼパム)(9)
[評価]☆☆☆☆

非ベンゾジアゼピン系睡眠薬
[薬名]マイスリー(ゾルピデム酒石酸塩)(9)
[評価]☆☆☆☆
[薬名]アモバン(ゾピクロン)(9)
[評価]☆☆☆☆

メラトニン作動薬
[薬名]ロゼレム(ラメルテオン)(8)
[評価]☆☆☆

[評価のポイント] これらの薬の有効性は信頼性の高い臨床研究によって確認されています。


総合的に見て現在もっとも確かな治療法
不眠のタイプとその原因を知る
 不眠症の治療では、不眠のタイプとその原因を知ることがまず必要です。
 たとえば、心不全による夜間の呼吸困難のための中途覚醒、せきがおもな症状である喘息による入眠障害や中途覚醒、睡眠時無呼吸症候群による中途覚醒、うつ病による早朝覚醒などがあります。
 いずれも、原因となるそれぞれの病気を治療しない限り不眠は治りません。

まず、生活のなかでいろいろな工夫を行う
 特定の病気や症状に伴わない不眠の場合は、睡眠衛生に気を配るという生活の調整をまず行って、それでも不眠で苦しむときにのみ睡眠薬を服用します。
 睡眠衛生には、日中に身体的活動を高めておくこと、寝室での光や音を排除すること、寝る前の飲食や入浴の方法に工夫する、ベッドでは読書や仕事をしない(つまり、ベッドに入ることは睡眠を意味するような条件反射をつくる)ことなどがあげられます。
 個人の好みによって、さまざまな工夫をするとよいと思います。

不眠そのものが寿命を短くするという研究報告はない
 夜間一人だけ眠れない時間を過ごすことは不安なものですが、不眠そのものが身体的な病気を引きおこしたり、寿命を短くしたりするという研究報告はありません。
 したがって、少々眠れなくても、体が疲れてくればそのうち必ず眠れるはずだと、ゆったりとした気持ちをもち続けることが大切です。

睡眠薬は不眠のタイプごとに使い分ける
 睡眠薬は効果がどのくらい持続するかにより、入眠障害や中途覚醒、早朝覚醒などの不眠のタイプごとに使い分ける必要があります。
 いずれの睡眠薬も、有効性はほぼ確実なものですので、使い方を誤りさえしなければ、ほとんどのケースで不眠は解消されるはずです。
 ただし、長時間効く薬は、翌日、脳神経細胞の活動が抑えられて、転倒し骨折の原因になることもあり、注意が必要です。

睡眠薬は心理的な依存に注意が必要
 もう一つの大きな問題は、心理的な依存ができてしまい、睡眠薬を飲まないと眠れないという状態が心配になることです。徐々に、睡眠薬の量と使用頻度を少なくしていきましょう。

(1)Stepanski EJ, Wyatt JK. Use of sleep hygiene in the treatment of insomnia. Sleep Med Rev 2003; 7:215.
(2)Bootzin RR, Perlis ML. Nonpharmacologic treatments of insomnia. J Clin Psychiatry 1992; 53 Suppl:37.
(3)Means MK, Lichstein KL, Epperson MT, et al. Relaxation therapy for insomnia: nighttime and day time effects. Behav Res Ther 2000; 38:665.
(4)Spielman AJ, Yang C, Glovinsky PB. Insomnia: Sleep restriction therapy. In: Insomnia Diagnosis and Treatment, Sateia MJ, Buysse DJ (Eds), Informa UK Ltd, London 2010. p.277.
(5)Buscemi N, Vandermeer B, Friesen C, et al. The efficacy and safety of drug treatments for chronic insomnia in adults: a meta-analysis of RCTs. J Gen Intern Med 2007; 22:1335.
(6)Holbrook AM, Crowther R, Lotter A, et al. Meta-analysis of benzodiazepine use in the treatment of insomnia. CMAJ 2000; 162:225.
(7)Kuriyama A, Honda M, Hayashino Y. Ramelteon for the treatment of insomnia in adults: a systematic review and meta-analysis. Sleep Med 2014; 15:385.
(8)Mini LJ, Wang-Weigand S, Zhang J. Self-reported efficacy and tolerability of ramelteon 8 mg in older adults experiencing severe sleep-onset difficulty. Am J Geriatr Pharmacother 2007; 5:177.
(9)Ashton H. Guidelines for the rational use of benzodiazepines. When and what to use. Drugs. 1994;48:25-40.

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家庭医学館 「不眠症」の解説

ふみんしょう【不眠症 Insomnias】

[どんな病気か]
 睡眠覚醒障害(すいみんかくせいしょうがい)(コラム「睡眠覚醒障害」)の1つのタイプで、睡眠が不足するものです。これはもっともありふれた病気の1つで、最近の調査によると、日本人の約4分の1に不眠の症状がみられるそうです(1995年、粥川裕平らによる)。
[症状]
 入眠障害(にゅうみんしょうがい)(横になってもなかなか寝つくことができない)、途中覚醒(とちゅうかくせい)(睡眠の途中で目が覚めてしまう)、早朝覚醒(そうちょうかくせい)(早朝のまだ暗いうちに目覚める)、熟眠障害(じゅくみんしょうがい)(眠りが浅く熟眠感がない)などがあります。
 これらの不眠症状が続いて現われ、本人や家族の人々に対して、著しい苦痛を与えたり、社会生活や仕事のうえで著しい機能障害をもたらしたりする場合に、不眠症と診断されます。
[原因]
 物理的環境因子(騒音、高温、高所など)、化学物質(アルコール、カフェイン、覚醒剤など)の使用などが不眠症の原因になります。また、心の病気(神経症、躁(そう)うつ病、統合失調症など)、神経の病気(認知症、脳血管障害、脳腫瘍(のうしゅよう)など)、その他のからだの病気(内分泌疾患(ないぶんぴつしっかん)、代謝性疾患、がんによる疼痛(とうつう)など)にともなう不眠症もあります。
 このように、特定の物理・化学的原因やさまざまな病気により二次的に発生する不眠症を二次性不眠症と呼びます。一方、原因がはっきりせず、不眠のみをおもな症状とするものは、一次性(原発性(げんぱつせい))不眠症と呼ばれます。
[検査と診断]
 診断、原因を確定するためには、精神医学的な診察や検査、脳や神経系の検査、さまざまな身体的検査を行ない、薬物、アルコールの使用歴や環境についても調べます。また、睡眠を客観的に検査することが必要な場合には、睡眠ポリグラフィ(コラム「睡眠ポリグラフィ」)を行ないます。それにより、ノンレム睡眠レム睡眠を含む睡眠の量的・質的特徴がわかります(図「健常成人の夜間睡眠経過図」)。
[日常生活の注意]
 昼間に適度な運動や日光浴を行なう、昼寝を避ける、飲酒は適量以下とし、飲みすぎないようにする、夜はコーヒーやお茶などを控え、リラックスを心がける、寝室の明るさ・温度・湿度を適性にし、必要に応じて遮光(しゃこう)カーテンなどを使用する、からだにあった枕(まくら)や寝具を選ぶ、眠れなくても就寝、起床時間をある程度固定し、規則的な生活を送るように心がけるといった点に注意しましょう。
[治療]
 原因がはっきりわかっている場合には、その原因の除去が重要です。さらに、「日常生活の注意」を試みても不眠症が続く場合には、不眠症の治療が必要になります。
 たとえば、睡眠薬を用いた薬物療法、自分で体調をコントロールする自律訓練法、バイオフィードバック法(精神療法のいろいろの「行動療法」)などにより、リラックスを促進させます。
 睡眠薬はこわいと思っている人がいますが、最近は副作用が少なく、快適な睡眠のとれるベンゾジアゼピン系睡眠薬などが数多くあります。専門医と相談し、その指導のもとで適切な薬物を適量服用することをお勧めします。

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食の医学館 「不眠症」の解説

ふみんしょう【不眠症】

《どんな病気か?》


〈生活環境の変化やストレス、不規則な生活が原因〉
 病気としての不眠症(ふみんしょう)とは、十分に睡眠がとれない状態が慢性的に続き、日中に眠くなったり、疲れたり、集中力が落ちたりする場合をいいます。
 おもな症状は、眠りにつきにくい、何度も目がさめる、眠りが浅いなど。ストレスや過度の緊張で、対人関係の悪化や生活環境の変化などがきっかけとなることも多いようです。

《関連する食品》


〈トリプトファン、ビタミンB群などを含む食品を〉
○栄養成分としての働きから
 安眠をうながすと考えられている栄養素には、トリプトファン、ビタミンB群、カルシウムがあります。
 トリプトファンはたんぱく質を構成する必須アミノ酸の一種で、体内でセロトニンをつくります。神経刺激の伝達物質であるセロトニンは、睡眠にも深くかかわっています。トリプトファンはダイズ、たまご、牛乳、チーズなどに多く含まれています。
 また、夜に深い眠りを得るためには、日中に脳をよく働かせておくこともたいせつです。アサリやシジミ、レバーなどに多く含まれるビタミンB群は、全般に昼間活動している脳をさらに活発にする効果があるので、日ごろから意識してとるようにしましょう。
 B群のなかでもとくに有効なのがナイアシンです。ナイアシンはカツオ、サバ、ブリといった魚やレバー、鶏ささみなどに含まれています。
 カルシウムにも鎮静(ちんせい)効果があります。食品として摂取したカルシウムの吸収を高める働きをするのがビタミンDです。もっとも効果的なのは、カルシウムを含む食品とビタミンDを含む食品をいっしょに、夕食時にとることです。
 カルシウムは牛乳や小魚、ゴマなどに多く、ビタミンDはサケ、カレイ、ニシン、カジキなどの魚にたくさん含まれています。
 ラベンダーなど、鎮静作用があるハーブを枕もとにおいたり、ラベンダーの精油を入浴剤に利用するのもいいでしょう。
 お酒は浅い眠りを導きますが、短時間で覚醒(かくせい)してしまうので、寝酒にたよらないことがたいせつです。
 また、カフェインを含むお茶やコーヒーなどはひかえめにしたほうがいいでしょう。
○漢方的な働きから
 タマネギには神経を安定させる作用があるといわれています。また、黒豆酒には、鎮静効果があり、不眠に有効です。
○注意すべきこと
 催眠鎮静剤には、アルコール類との併用で作用が増強し、意識喪失(いしきそうしつ)などの重い副作用を起こすものが多いので、禁酒をまもりましょう。

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内科学 第10版 「不眠症」の解説

不眠症(睡眠異常)

(1)不眠症(insomnia)
定義・概念
 睡眠の質や量が十分に得られない状態で,日中の眠気,倦怠感,集中力低下,作業能力低下,居眠りを伴う.
原因・病因
 睡眠に対する過度のこだわりをもち,就寝時刻になると緊張して眠れなくなるのが,不眠症の原因として最も多い.睡眠を妨げる疼痛,かゆみ,頻尿,呼吸苦をもたらす疾患,閉塞性睡眠時無呼吸症候群,レストレスレッグズ症候群,交替制勤務や不適切な生活リズムによる体内時計のずれ,不適切な寝室環境,ストレスや悩み,うつ病などの精神疾患,不眠を生じる薬剤やカフェイン・ニコチンなども不眠症の原因となる.
臨床症状
 入眠困難,中途覚醒,早期覚醒,熟眠感の欠如がみられる.高齢者では睡眠は浅くなり,中途覚醒・早期覚醒の訴えが多くなる.
治療
1)生活指導:
不眠症の原因を取り除くのが第一である.規則正しい生活をする,日中適度な運動をする,寝室の環境を改善する,リラックスできるよう工夫するなど睡眠にかかわる生活習慣や環境因子の改善を図る.
2)薬物療法:
抗不安薬やベンゾジアゼピン系睡眠薬が有効である.睡眠薬は半減期により,超短時間作用型,短時間作用型,中間作用型,長時間作用型に分類される.入眠困難に対しては超短時間作用型や短時間作用型を用い,中途覚醒・早期覚醒に対しては中間作用型や長時間作用型を使う.睡眠薬の筋弛緩作用により閉塞型睡眠時無呼吸症候群を悪化させることがある.長時間作用型の睡眠薬では,翌日に眠気・ふらつきなどの持ち越し効果が出現しやすい.高齢者では短時間作用型の薬剤が望ましい.薬物代謝が遅い高齢者では,薬の効果が蓄積する傾向があるので成人の1/2~1/3程度の少量から始める.[黒岩義之]
■文献
大川匡子,内山 真:睡眠障害.ダイナミック神経診断学(柴崎浩編),pp303-312,西村書店,新潟,2001.

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百科事典マイペディア 「不眠症」の意味・わかりやすい解説

不眠症【ふみんしょう】

睡眠異常の一種。十分に睡眠がとれないことで苦痛を感じる状態。特にその慢性状態をいう。不眠の型により,寝つきの悪い入眠障害,熟眠できない熟眠障害,早く目がさめてしまう早期覚醒,睡眠中しばしば目が覚める途中覚醒などに分類。動脈硬化高血圧神経症躁鬱(そううつ)病統合失調症精神分裂病)などが原因となるほか,騒音や異常気候,身体各部の痛み,かゆみ,頻(ひん)尿などでも起こる。神経症では主観的な不眠が多い。治療には原因療法と各種催眠薬の投与。
→関連項目アドルム断食療法バルビタール

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改訂新版 世界大百科事典 「不眠症」の意味・わかりやすい解説

不眠症 (ふみんしょう)
insomnia

自覚的な睡眠困難を慢性的に訴える状態をさす。不眠の原因には,(1)精神的な興奮や不安によるもの,(2)脳動脈硬化症のような脳の器質的疾患あるいは呼吸器疾患,循環器疾患のような身体疾患によるもの,薬物その他の中毒によるもの,(3)旅行や騒音など外部環境の変化によるもの,などがある。また睡眠困難の型には,(1)入眠することが困難なもの(入眠障害),(2)睡眠中途に覚醒するもの(熟眠障害),(3)朝早く覚醒するもの(早朝覚醒),などがある。うつ病や統合失調症でも不眠が認められ,この場合には脳波的にも入眠期に深睡眠に至らず,覚醒しやすかったりすることが指摘されている。一般に〈不眠症〉とよばれるのは,心理的な原因による神経症性の不眠であり,この場合は睡眠に対する欲求が過大であるために睡眠を意識して眠れなくなるものである。また終夜睡眠脳波記録上はかなりよく眠っており,覚醒後の睡眠評価が正常人より悪いことが目立つことから,いわゆる不眠ノイローゼともいえる状態である。
睡眠
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「不眠症」の意味・わかりやすい解説

不眠症
ふみんしょう
insomnia

不眠(睡眠の開始および持続の障害)があり、自覚的な苦痛や社会的、職業的障害が生じている状態をいい、精神疾患、神経疾患、内科的疾患によるもの、精神的なストレスによるもの、神経質な性格によるもの、老人性のものなどがある。頑固な不眠を訴えるが、睡眠の質・量ともにほとんど異常のないものもあるので、診断の際には睡眠の実態をよく調べる必要がある。

[大熊輝雄]

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デジタル大辞泉プラス 「不眠症」の解説

不眠症

米国の作家スティーヴン・キングの小説(1994)。原題《Insomnia》。

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