1880年に米国の医師ベアードが命名した症候群で、一世を
しかしICD10(世界保健機関「国際疾病分類第10版」)では、この診断名がみられます。これによると主症状は、①精神的努力のあとの疲労の増大についての持続的な訴え、②あるいはわずかな努力のあとの身体的な衰弱や消耗についての持続的な訴えのどちらかがあることで、具体的症状としては、めまい、筋緊張性頭痛、睡眠障害、くつろげない感じ、いらいら感、消化不良などがあります。
輪郭が不鮮明で、
ベアードは、この病態をノイロ(神経)+アステニー(無力=衰弱状態)の複合語として案出しました。当時の米国では都市化・工業化が進み、労働者のなかにこの状態が多発しているとしました。この概念はそのまま日本に輸入され、多くの支持者を得ました。治療としては転地や安静が推奨され、一方で注射などによる強壮療法が行われましたが、いずれも決定的な治療法になりませんでした。
そのなかで森田正馬(1874~1938)は、この神経衰弱のなかに強力性(「生の欲望」が強いために心身の不調に過敏になる)の面を見いだし、
ICD10と同様によく用いられるDSMⅣ(米国精神医学会「精神疾患の分類と診断の手引き第4版」)では、神経衰弱の項目はありません。ベアードの母国でつくられたこの診断基準にその名をとどめないということは、この診断名の命運を暗示しているといえます。この診断名は、
治療には薬物療法と精神療法が、単独または重複して用いられています。
丸山 晋
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
第二次世界大戦前、現在普及している「ノイローゼ」という呼称のように、精神障害を代表する俗称として親しまれていた用語。本来は、1869年アメリカの医師ビアードGeorge Miller Beard(1839―83)の提唱になるもので、学問的には世界保健機関(WHO)の国際疾病分類第9版(ICD‐9。1975年承認、78年出版)では神経症のなかに重要な位置で分類されていたが、1990年に承認(1992年出版)された同分類第10版(ICD‐10)では「その他の神経症性障害」のなかに小さく残されている。つまり、今日では世界的に精神科医の間ではあまり使われなくなっている。しかし、中国などでは今もなお重要な診断名とされている。民族や文化のちがいによって精神障害の症状のあらわれ方や疾病観のちがいがあることを示している。心身の過労による中枢神経系の刺激性衰弱の状態とされ、疲労感、頭重、頭痛、過敏、不眠、集中力低下、抑うつ感などの症状が特徴である。今日では他の病名、とくにうつ病と診断されることが多い。それは、うつ症状を中心症状と理解される場合が多くなったことによる。
[西園昌久]
1880年にアメリカの神経科医ビアードG.M.Beardによって提唱された概念で,当初は心身の過労による神経系の疲労によると考えられ,刺激性衰弱irritable weaknessと呼ばれた。しかし,その後,戦線などの不眠不休の状態にある人に必ずしもみられないこと,心身の休養によっても回復するとは限らないことなどから,むしろ過労そのものよりも,その人の置かれた状況と素質ないし性格とのかね合いで生じるものと考えられ,神経症の一型とされた。病態は心身の刺激性と衰弱性の混在する自覚症を主とするもので,他覚的な所見に乏しい。精神症状として能率低下,自覚的思考障害,集中困難,いらいら感,また身体症状として不眠,疲労・脱力感,頭痛ないし頭重感,肩こり,眼精疲労その他が自覚される。単純なものは休養によって回復するが,なかには慢性化して治りにくいものもある。なお,類似する状態は,統合失調症のような精神病の初期や種々の身体疾患の際にも出現することがある。
執筆者:永島 正紀+野上 芳美
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…彼は神経症を現実神経症と精神神経症とに区別したが,小児期からの心理的葛藤ではなく,現実の性的活動が不適切なことによる生理的緊張の集積の結果,自律神経症状や情動障害を呈する一群があると考え,それを現実神経症とした。これには神経衰弱と不安神経症が含まれ,神経衰弱は過剰な性活動のため,不安神経症は性的興奮が十分に発散されないための中毒と考えられ,のちに心気症もこれに加えられた。これに対し,精神神経症には転換ヒステリー,不安ヒステリー,強迫神経症が含まれ,これらは性衝動をめぐる葛藤に起因するものであり,性衝動の発達段階と抑制機制とによって象徴的な症状が形成されると理解された。…
…不眠,食欲不振,動悸などの身体症状を伴うこともある。(6)神経衰弱 持続的な緊張や葛藤による疲労感を主症状とする。疲労感,注意集中困難,焦燥感,記憶力低下,精神作業能力の低下などの精神症状と,不眠,頭痛,食欲不振,振戦などの身体症状からなる。…
※「神経衰弱」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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