ドクダミ(読み)どくだみ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドクダミ」の意味・わかりやすい解説

ドクダミ
どくだみ / 蕺
[学] Houttuynia cordata Thunb.

ドクダミ科(APG分類:ドクダミ科)の多年草。特有の臭気がある。地下茎は白く、横走する。高さ20~50センチメートル。葉は互生し、心臓形または広卵形裏面は紫色を帯びる。托葉(たくよう)は下部が葉柄と合着して鞘(しょう)状となる。花序は穂状で頂生し、基部には白色で花弁状の大きな包葉が4枚あり、全体が一つの花のようにみえる。他の包葉は線形で小さい。花は小さく、両性で花被(かひ)を欠く。雄しべは3本、花糸の下部は子房と合着する。雌しべは3枚の心皮からなり合生し、花柱は3本。子房の上端は果実期に裂開する。種子は多数。庭隅や木陰などの湿地に群生し、日本全土、および東南アジアからヒマラヤにかけて広く分布する。1属1種。包葉が多数あり全体が八重咲きの花に見えるものをヤエドクダミ(ヤエノドクダミ)といい、観賞用に栽培される。

[大森雄治 2018年7月20日]

薬用

日本では全草を十薬(じゅうやく)、重薬(じゅうやく)ともよび(中国では蕺菜(じゅうさい)、魚腥草(ぎょせいそう))、利尿解熱、排膿(はいのう)、解毒の作用があるため、腫(は)れ物、高血圧症、肺壊疽(えそ)、肺結核、感冒、蓄膿症、痔(じ)、便秘などの治療に用いる。約0.005%含まれている精油には抗菌性、抗カビ性がある。また、ドクダミがもつ特異な臭(にお)いはデカノイルアセトアルデヒド、ラウルアルデヒドによる。なお、十薬の名は、ドクダミでウマを飼育すると、10種の薬に相当する効果があることから生まれたという。

[長沢元夫 2018年7月20日]


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改訂新版 世界大百科事典 「ドクダミ」の意味・わかりやすい解説

ドクダミ
Houttuynia cordata Thunb.

低地林下路傍に群生するドクダミ科の多年草。傷つけると特有の臭気をはなつ。花序の下にある白色の4枚の大きな総包葉が目だち,1個の花のように見える。和名は〈毒痛み〉の意味だといわれる。地下茎は長くはって広がり,地上茎は直立して高さ20~50cm。全体は柔らかである。葉は互生し,大きな托葉があり,葉身は心臓形で先はとがり,鋸歯はなく,長さ4~8cm,幅3~6cm。6~7月,茎の先に短い穂状花序をつくり,小さな花を多数つける。花序の基部には4枚の大きな総包葉がある。花は黄白色で花被がなく,小さな包葉のわきに3本のおしべと1個のめしべがある。蒴果(さくか)は広卵形で3裂する。1属1種で,本州~沖縄,中国,ヒマラヤ,東南アジアに広く分布する。

 中国では全草を魚腥草(ぎよせいそう)の名で,解熱,解毒,利尿,湿疹の治療などに用いる。日本でもはれもの,虫さされ,切傷洗眼,駆虫,皮膚病あるいは胃腸病に用いられ,十薬(じゆうやく)の名がある。特有の臭気はラウリンアルデヒドやカプリンアルデヒドなどのアルデヒド類による。根茎はデンプンを含み,食料不足のときに煮て食べたこともあった。欧米では観賞用に栽植されることもある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ドクダミ」の意味・わかりやすい解説

ドクダミ
Houttuynia cordata

ドクダミ科の多年草。アジアの暖温帯から熱帯にかけて広く分布し,日本でも本州,四国,九州でごく普通である。全体に悪臭があり,やや湿った場所や陰地を好む。地下茎は円柱形で白く,横にはい,多数分枝して繁殖する。茎は 20~50cmの高さで暗紫色になることが多く無毛。葉は互生し心臓形で暗緑色,裏面は茎と同様赤紫色を帯びる。初夏に,茎の上部から花穂を出し淡黄色の小花を穂状に密生する。この花穂の基部に4枚の白い総包片があって花弁のように見える。個々の花には花被はなくおしべ3本がある。めしべの子房は3室に分れる。古くから民間薬として生の葉をもんではれものにはったり,煎じて利尿剤や駆虫剤とする。

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百科事典マイペディア 「ドクダミ」の意味・わかりやすい解説

ドクダミ

ドクダミ科の多年草。本州〜沖縄,東南アジアに分布し,平地の林下や路傍にはえる。全草に臭気がある。根茎が地中をはい,茎は高さ30cm内外,卵状ハート形の葉を互生。6〜7月,花弁状の4枚の白い総包葉の上に淡黄色の小花を多数穂状につける。花弁はなくおしべ3本。全草を煎じて,利尿,駆虫薬とし,生葉を化膿,創傷にはるなど広く用いられ,十薬(じゅうやく)の名がある。
→関連項目民間薬

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世界大百科事典(旧版)内のドクダミの言及

【漢方薬】より

…漢方薬に類似する用語に和漢薬,皇漢薬,民間薬などがあり,商業上はこれらを総括して漢方薬と呼ぶことがあるが,それぞれ,厳密には異なる内容を意味する。たとえば,ゲンノショウコ,ドクダミ等は広く日本の民間で用いられているが,使用法は漢方の場合とまったく異なるので通常,漢方薬には含めず,民間薬として区分する。また,ウワウルシ,ゲンチアナ,ジギタリス,麦角等は西洋医学では古くから用いられてきた生薬であるが,漢方薬ではない。…

【民間薬】より

…民間薬と漢方薬はこのように互いに交流があり,区別の判然としないものも多い。比較的区別の明確な薬物を強いてあげれば,ドクダミ,ゲンノショウコ,センブリなどで,これらは民間薬として広く用いられているが,漢方薬としてはあまり用いられない。一方,柴胡(さいこ),黄芩(おうごん),麻黄などは漢方薬として使用頻度が高いが,民間薬として用いることは少ない。…

※「ドクダミ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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