日本大百科全書(ニッポニカ) 「ティセリウス」の意味・わかりやすい解説
ティセリウス
てぃせりうす
Arne Wilhelm Kaurin Tiselius
(1902―1971)
スウェーデンの生物物理化学者。8月10日、ストックホルムの学者の家系に生まれる。イョーテボリの中学時代にティセリウスの心はすでに科学に傾き、当時一流の物理化学者スベドベリーのもとで学ぼうと1921年ウプサラ大学に入学した。そして1925年、念願のスベドベリーの研究室に入り、当時超遠心機によるタンパクの沈降速度の研究に全精力を傾けていた師の指導と理解のもとでタンパクの電気泳動の研究に専心、これにより1930年学位を得た。1934年から1935年にかけアメリカに滞在、スタンリー、ノースロップ、ランドシュタイナーら偉大な生物化学者の影響を受けてウプサラに帰りタンパクを分離する精密な電気泳動装置の製作に専心、ついに1937年、有名な「ティセリウスの装置」を完成し、血清タンパクを4種に分離することに成功した。1940年代からは、ゼオライト(粘土の一種)、紙、ゲルなどのなかでの各種タンパク、高分子の吸着力の差を利用してこれらを分離する方法、いわゆるクロマトグラフィーの改良に従事、生体物質の分離法に画期的な進歩をもたらした。これらの業績に対して1948年ノーベル化学賞が授与された。健康に恵まれた彼も晩年心臓を弱らせた。医師の忠告にもかかわらずある集会に出席、発作に襲われて倒れ、翌朝死去した。1971年10月29日のことであった。
[中川鶴太郎]