テングニシ(読み)てんぐにし(英語表記)false fusus

日本大百科全書(ニッポニカ) 「テングニシ」の意味・わかりやすい解説

テングニシ
てんぐにし / 天狗辛螺
false fusus
[学] Hemifusus ternatanus

軟体動物門腹足綱テングニシ科の巻き貝。房総半島以南の水深10~50メートルの砂底にすむ。殻高19センチメートル、殻径8.5センチメートルに達し、殻は紡錘形でやや厚質堅固である。螺塔(らとう)は円錐(えんすい)形で8階、体層は殻全体の大部分を占め、下方へ細く狭くなる。体層の肩角の結節瘤(りゅう)は10~15ある。各螺層も普通は強い肩角があって、7~9の多少とがった結節瘤をもつ。また、全面に多数の細い螺肋(らろく)がある。殻は淡紅色で、表面に黄褐色のビロード状の厚い殻皮をかぶる。殻口は淡紅色で長く、下方へ細まり広く開いた水管溝となる。外唇は肩部で角をつくる。蓋(ふた)は長卵形の革質で黒褐色、核は細まった下端にある。5~6月に産卵し、卵嚢(らんのう)は黄色い革質の軍配形、高さ約10ミリメートルで、列状に並べて岩などに産み付けられる。卵はこの中で幼貝になるまで育ち、小さく丸い脱出口からはい出る。卵嚢はウミホオズキとよばれ染色されて、口で鳴らす玩具(がんぐ)として海水浴場夜店などで売られている。殻は貝細工に利用され、肉は食用になる。

[奥谷喬司]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「テングニシ」の意味・わかりやすい解説

テングニシ
Hemifusus tuba; tuba false fusus

軟体動物門腹足綱テングニシ科。殻高 19cm,殻径 8.5cm。殻は紡錘形で,やや厚く堅固。体層は大きく高く,下方へいくにつれて狭くなる。殻表は淡黄白色。肩は丸いこともあるが多くは角があり,とがった結節列がある。殻全面に螺肋があり,黄褐色のビロード様の厚い殻皮がこれをおおう。殻口は大きく長く,下方へ狭くなって水管を形づくる。ふたは長卵形で革質。房総半島以南の水深 10~50mの砂泥底にすみ,5~6月頃,高さ 1cmほどの軍配形の卵嚢を地物に多数行列状に産みつける。1つの卵嚢には 5000個以上の卵が入っているが,先にかえった幼貝が他の卵を餌として育ち,最終的に 10個体ほどになる。成長した幼貝は小さい丸い脱出口からはって外へ出る。卵嚢は染色して海ほおずきとして縁日や海水浴場などで売られている。肉は食用に,殻は貝細工の材料となる。

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