ウミホオズキ(読み)うみほおずき(英語表記)whelk's egg capsules

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウミホオズキ」の意味・わかりやすい解説

ウミホオズキ
うみほおずき / 海酸漿
whelk's egg capsules

一部の海産巻き貝が産む袋状の卵嚢(らんのう)をいう。軟体動物門腹足綱の海産巻き貝類の一部(おもに新腹足目)は、卵を袋すなわち卵嚢に入れて他物に産み付ける習性がある。このうち革質の袋状のものを「ホオズキ」といい、植物のホオズキと区別するため、「ウミホオズキ」とよぶ。一般には袋形、財布形、瓶形などの、黄白色ないし淡紅色の半透明の革質で、酸やアルカリにも強い。縁日夜店で売っているのは玩具(がんぐ)用に赤や黄色などに染色してある。「ホオズキ」は、雌の生殖口かあら出される卵が、足の裏のポケット状のくぼみに導入され、ここで粘液とともに固められ、これが海底の岩などに付着されてできる。貝は、1個の卵嚢が形成されると足をあげて引き抜き、わずかに前進して、次の卵嚢をつくる動作を繰り返すので、いずれの卵嚢も鋳型でつくられるように同形同大で、わりあい規則正しく並んでいる。巻き貝の種類によって足の裏のポケットの形が一定しているのでホオズキの形も一定で、種々の呼び名がある。アカニシRapana venosaの卵嚢は細くて反っているのでナギナタホオズキ(5~8月に産む)、テングニシHemifusus ternatanusの卵嚢は団扇(うちわ)状で幅広くて大きく、総称と同じウミホオズキ(3~7月)の名でよばれ、ナガニシFusinus perplexusの卵嚢はやや幅が狭い軍配形のためグンバイホオズキまたはサカサホオズキ(5~8月)とよばれる。さらに、ボウシュウボラCharonia sauliaeの乳房形の卵嚢はトックリホオズキ(12月~2月)、コロモガイSydaphera spenglerianaの細長い柄のあるものはチャンチャンホオズキ(夏季)、ミガキボラKelletia lischkeiの半球形のものはマンジュウホオズキ、また、バイBabylonia japonicaやモスソガイVolutharpa perryiのものはアワホオズキなどと俗称される。中の幼生が孵化(ふか)すると、ベリジャー幼生となって外に出るものと、ベリジャー幼生の段階を終わって匍匐稚貝(ほふくちがい)となって出るものがあるが、いずれも脱出するための開口ができる。なお、玩具(植物のホオズキと同じように、口に入れて音を出して遊ぶ)用の商品としては、抜け殻よりも中に卵のあるものがよいとされ、かつてこのような玩具が普及していた時代には、親貝の多くすんでいる海底に木の枝や古網あるいは籠(かご)などを沈めて産卵させ採取していた。

[奥谷喬司]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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