テーブルヤシ(読み)てーぶるやし

日本大百科全書(ニッポニカ) 「テーブルヤシ」の意味・わかりやすい解説

テーブルヤシ
てーぶるやし
[学] Chamaedorea elegans Mart.

ヤシ科(APG分類:ヤシ科)テーブルヤシ属(チャマエドレア属)138種中の1種。属名はラテン語で矮小(わいしょう)な賜物(たまもの)、種名は優美という意味である。メキシコを主産地とするが、グアテマラコスタリカパナマコロンビアベネズエラエクアドル、ブラジルにも自生する。日本には第二次世界大戦後、室内ヤシとして導入された。全体が小形で、雄花紡錘形であるところから、コリニアColliniaを属名としていたことがあるが、現在は用いられない。幹は単一で、高さ1~1.5メートル、径1センチメートル、暗緑色を呈する。幹肌に環状の葉痕(ようこん)が2センチメートル間隔にある。葉は半光沢の暗緑色、披針(ひしん)形で羽状葉、長さ40センチメートル。小葉は片側に14枚つき、長さ16センチメートル、葉面に浅い波紋がある。葉鞘(ようしょう)は薄く、長さ7~10センチメートル、全長の3分の2までが割れる。雌雄異株で単性花をつける。花は肉穂花序につき、淡緑色、花序の主柄は長さ22センチメートル、花軸は12センチメートル。雄花は紡錘形、長さ3ミリメートル、径2ミリメートル。花弁舟形雄しべは6本、花糸は細長く、葯(やく)は麦粒形で上半部は分裂する。柱状の不稔(ふねん)の雌しべがある。雌花はほぼ球形で、雌しべはざくろ果に似て柱頭は3裂し、外曲状になっている。6本の無精の雄しべがある。萼(がく)は鐘形で3枚の鋭片がある。果実は紫黒色、楕円(だえん)形で、長さ1.4センチメートル。種子は長さ1センチメートル、胚(はい)は横下にある。本種より小さいものも多種ある。室内の卓上用観葉植物としてよく栽培される。鉢栽培には蛍光灯が最適で、直射日光は避ける。同属のヒメテーブルヤシは高さ1.5メートルで、双葉種のなかでは珍種とされる。葉は鉛色、鋭い矢筈(やはず)形で、多肉感がある。また、キレバテーブルヤシは、葉が切れ込む種類である。栽培最低温度は3℃。

[佐竹利彦 2019年4月16日]

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改訂新版 世界大百科事典 「テーブルヤシ」の意味・わかりやすい解説

テーブルヤシ
Chamaedorea elegans Mart.

メキシコ,グアテマラに分布する小型のヤシ。1955年ころに日本に渡来し,観葉鉢物として栽培される。小型のヤシの代表種で,実生3~4年のものが美しい。葉は羽状複葉で長さ40~60cmになり,小葉は細長く30枚以上もつく。古株になると下葉が自然に枯れ落ちて見苦しくなる。耐寒性も強く,日照不足にもよく耐えるので,室内で楽しめる。夏は半日陰でないと日焼けする。ハダニがつきやすい。ヒメテーブルヤシC.tenella Wendl.も小型種で,矢羽根状の葉は銀白緑色で美しいが,葉数が少なく,下葉が枯れやすい。株立ちになるものに,キレバテーブルヤシC.erumpens H.E.Moore,カマエドレア・セイフリジイC.seifrizii Burretがある。ともにメキシコ原産で,茎は竹のように細く直立し,羽状複葉で草姿がよく,中~大鉢物に向く。寒さにも強く,日陰にもよく耐えるので,室内装飾にも適する。
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