( 1 )現代語の「である」の発生については、( イ )中世の「である」は、中世末期には「だ・ぢ(じ)ゃ」と音転化して多用され、それに従って終止形「である」は、近世初頭に消失したが、近世末期に、成立の背景が異なる「である」(オランダ語 zijn の直訳語アルと補格語デとの結合)が長崎通詞によって蘭学書の訳文に用いられ、これが現代語「である」の起源になったという説(山本正秀)と、( ロ )中世の「である」は、近世になると、漢学者の講義物、国学者の口語訳、僧侶の説教類などに多用され、江戸期の教養層の用語として存続し続けたとする説との二つがある。
( 2 )明治以後は言文一致運動の盛行、演説や実用文での試行、小説における「である」調の完成(尾崎紅葉「多情多恨」)、国定教科書における口語文の採用などによって普及一般化し、現代口語文の基幹をなすに至った。
( 3 )現代語では「だ」と同じはたらきを持つものとして「である」全体を助動詞とみる説もある。ただし、「で」と「ある」との間に「は」「も」などの助詞をはさむことがある。
( 4 )「静か」「平ら」「熱心」などに「である」の付いたものは、通常、形容動詞に補助動詞「ある」を伴ったものと説かれるが、「である」の用法としては差違がない。助動詞「そうだ」「ようだ」の場合も同様。
( 5 )否定形には、「でない」が用いられる。丁寧体は「であります」または「です」、その否定形は「では(でも)ありません」。
( 6 )活用語を受ける「のである」は、活用語の叙述に説明の口吻を加える。
( 7 )活用語に直接するのは、現代語としては「であろう」「ではないか」およびその丁寧体の場合に限られる。
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