行政手続きを原則として電子申請に統一すると定めた法律。正式名称は「情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律」(令和1年法律第16号)で、デジタル手続法ともよばれる。2019年(令和1)に、行政手続きオンライン化法(平成14年法律第151号、別称:デジタル行政推進法)を中心にマイナンバー法、公的個人認証法、住民基本台帳法、健康保険法などが一括改正され、2019年度から順次施行される。デジタルファースト法は、(1)行政手続きをデジタル処理で完結する「デジタルファースト」、(2)一度出した情報の再提出は求めない「ワンスオンリー」、(3)複数手続きを一度で済ます「ワンストップ」を3原則とし、国民の利便性向上、行政の効率化、海外に負けない平易・簡素なビジネス手続きの確立につなげるねらいがある。引っ越しの際、ネットの専用サイトで住民票の移転手続きをすれば、電気、ガス、水道、銀行口座などの契約変更も一括処理できるようにする。相続や死亡申請もネットで完結できるように改善する。2020年度から、法人設立もネットで申請でき、登記事項証明書の添付や、複数の行政窓口に提出する手間を省く。マイナンバーの個人番号を知らせる紙製の「通知カード」を廃止し、ICチップのついたマイナンバーカードの普及を進める。2021年3月からは、マイナンバーカードを健康保険証のかわりに使用できるようにし、利用者が約1割にとどまるマイナンバーカードの普及につなげる。地方自治体ごとにばらばらの税や社会福祉の仕様を改め、システムの共通化や書式の統一を進める。欧米では税や社会保障手続きの多くがデジタル化されているが、日本は大きく遅れており、2016年度(平成28)時点で行政手続きは約4万6000種類あるが、電子化されたのは1割強にとどまる。このため政府は行政手続きデジタル化の推進を2019年の経済財政運営の基本方針(骨太の方針)の目玉とし、デジタルファースト法を制定した。
[矢野 武 2019年11月20日]
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