民法が特殊な所有権取得の原因として規定する付合(ふごう),混和,加工の総称。付合とは,A所有の土地にBが種苗を植栽するとか,A所有の建物にBが自分の材料で増改築をなす場合のように,所有者の異なる数個の物が結合することであり,混和とはAの米とBの米とが混ざり合わさるような場合をいい,加工とは,他人の動産に工作を加えることをいう。これらの上位概念として添付と称するゆえんは,これらが次のような共通の問題性を有するからである。
(1)添付によって,新たな一個の物(合成物,混和物,加工物)が生ずる。そして分離・復旧が物理的に困難であるとか,経済的・社会的にみて適当でないとかの理由から,一物化の結果は確定的なものとして扱う。何ぴとも復旧を請求できない。
(2)添付の結果生じた物(たとえば,A所有の材木にBが工作を加えできあがった机)の所有権がだれに帰属するかの基準を明らかにしておく必要がある。この基準は一応民法により示されている。添付が所有権取得の原因として規定されているゆえんである。まず,不動産と動産の付合では不動産の所有者に帰属し(民法242条本文),動産と動産の付合では,主たる動産の所有者に(243条),主従の区別のつかないときは各動産の所有者の共有に属すとされる(244条)。混和の場合は動産の付合と同じ基準に従い混和物の所有者が決定される(245条)。他人の動産に加工を加えた場合には,加工物の所有権は原則として材料の所有者に帰属するが,例外的に,加工物の価格が材料の価格と比べて著しく高いとき(たとえば,画材店所有のキャンバスに画家が芸術作品を完成したときなど)は加工者に帰属する(246条1項)。加工者が材料の一部を提供して加工した場合は,その材料の価格に工作によって生じた価格を加えたものが,他人の材料の価格を超えるときにかぎり,加工物が加工者に帰属する(同条2項)。なお,以上の民法の基準は絶対的なものではなく,所有権帰属についての当事者(たとえば,材料を提供して工作を依頼した者と加工者)の合意があれば,それが優先する。また,とくに,加工法理は製造工場で労働者によって生産された生産物には適用されないと解される。
(3)添付の結果生じた物に対し所有権(または共有持分)を取得しえない者には損失(旧物の所有権喪失)が生ずる。そこで,この者には,不当利得の規定(703,704条)に従った償金請求権が与えられており(248条),利得を受けた所有権取得者との間で利害の金銭的調整がなされる。
(4)添付以前の各物件に付着していた所有権以外の第三者の権利は,本来消滅するはずであるが(247条1項),第三者の権利は可能な限り保護することが適当であるので,その権利の客体であった物件の所有者が合成物,混和物,加工物の単独所有権を取得したときはその上に,共有者となったときはその持分の上に,上記権利が存続することを認めている(247条2項)。
執筆者:安永 正昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
民法上、付合、混和、加工の総称。甲の土地に乙が樹木を植え、それが根を張ったときは、樹木の所有権は甲の土地所有権に吸収される。このように、所有者の異なる2個以上の物が結合して1個の物になる場合(前述の例のような場合を「付合」といい、甲の酒と乙の酒とが混ざり合って新しい酒になるような場合を「混和」という)や、他人の材料に加工して別種の物を作成した場合(「加工」という)を、民法上、添付という。民法では、だれが新しい物の所有者になるかということと、所有権を失う者が償金を請求できることが規定されている。原則として、大きな価値を提供した者が新しい物の所有権を取得し、損失を受けたほうは不当利得の返還を請求できる(民法242条~248条)。
なお、国際法上は、土地の自然拡張(領海内の島の隆起、沿岸地の堆積(たいせき)など)による領土の取得を添付という。
[高橋康之・野澤正充]
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