日本大百科全書(ニッポニカ) 「デソーテルス石」の意味・わかりやすい解説
デソーテルス石
でそーてるすせき
desautelsite
マグネシウムおよび三価のマンガンの塩基性含水炭酸塩鉱物。ハイドロタルカイトのMn3+置換体に相当し、ハイドロタルカイト系鉱物に属するが、ハイドロタルカイト自体マイクスナー石meixnerite(Mg6Al2(OH)18・4H2O)という水酸化鉱物と同構造であり、合成実験では両者の中間物も合成可能であることから、[CO3](炭酸)の存在にもかかわらずこれを水酸化物とみなす見解もある。自形は1ミリメートル以下の大きさであるが、六角板状あるいは六角短柱状。これが集合して皮膜を構成する。
超塩基性岩の割れ目に皮膜状をなし、また細い炭酸塩脈の壁面上に産する。日本では、高知県高知市蓮台(れんだい)で超塩基性岩の割れ目の壁面上に着生し、また三重県鳥羽(とば)市白木(しらき)町でも同様の産状で産する。共存鉱物は蛇紋石(じゃもんせき)鉱物のほか、アルチニ石artinite(Mg2[(OH)2|CO3]・3H2O)、ブルース石、あられ石、ハイドロタルカイト、菱(りょう)マンガン鉱など。同定は鮮やかな橙(だいだい)色。風化すると鮮やかさがなくなる。酸で発泡して溶解し、褐黒色のマンガン化合物を残す。非常に柔らかく、もろい。命名はアメリカのスミソニアン・インスティチューション所属の鉱物学者ポール・アーネスト・デソーテルスPaul Ernest Desautels(1920―1991)にちなむ。
[加藤 昭]