あられ石
あられいし / 霰石
aragonite
炭酸塩鉱物の一つ。方解石、ファーター石などと同質異像関係にあり、これらより密な原子配列をもつ鉱物。超塩基性岩を切る細脈、玄武岩・安山岩、同岩質火山砕屑(さいせつ)岩の空隙(くうげき)、ある種の熱水鉱脈、温泉・地下水沈殿物、比較的低温・高圧条件下生成の広域変成岩、粘土質の堆積(たいせき)岩、金属鉱床酸化帯などに産する。方解石の高圧処理によっても、溶液からの沈殿でも生成される。
自形は多く斜方柱状、板状、あるいはこれが三連双晶(3個の個体が同じ関係で連なった双晶)した六角柱状をなす。中性~アルカリ性の条件下の形成になるが、室温では少量のマグネシウムイオンを含む、可溶性のカルシウム塩の水溶液中に適量の炭酸ソーダ溶液を加えると得られる。しかし溶液の濃度が低いと、常温では方解石相当相が得られる。貝殻や真珠を構成する炭酸カルシウム中にはあられ石が含まれることもある。2015年に、キルギス共和国フェルガナ盆地の南側に位置するオシュの地すべり堆積物中からナノ単位の大きさで第4、第5のCaCO3の変態(高圧相)が現地生成物質として発見された(第1~第3変態は方解石、霞(かすみ)石、ファーター石)。英名は原産地のスペインの地方名アラゴンAragonにちなむ。
[加藤 昭 2015年12月14日]
あられ石(データノート)
あられいしでーたのーと
あられ石
英名 aragonite
化学式 CaCO3
少量成分 Sr,Ba,Pb
結晶系 斜方(直方)
硬度 3.5~4
比重 2.94
色 無,白,淡褐
光沢 ガラス
条痕 白
劈開 一方向に明瞭
(「劈開」の項目を参照)
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
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あられ石
アラレイシ
aragonite
CaCO3よりなる鉱物.空間群 Pmcnの斜方晶系.格子定数 a0 = 0.496,b0 = 0.796,c0 = 0.574 nm.単位格子中4個の基本組成を含む.硬度3.5~4.密度2.947 g cm-3.紫外線,X線,電子線により蛍光を発する.Caの一部はわずかにSr,Pb,Znで置換される.方解石と多形の関係にあるが不安定である.火成岩の晶洞,あるいは低温の地表,温泉地帯に産出する.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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アラレ(霰)石【あられいし】
方解石と同じく炭酸カルシウムの鉱物で互いに多形。晶癖は柱状,針状など。時に擬六方体を作る。無色透明か各色の淡色。火山岩のすきまや各種鉱床中にサンゴ状などの姿で産する。二枚貝の殻など生物がつくる鉱物(生体鉱物)としても重要。へき開は柱の一方向に明瞭,硬度3.5〜4,比重2.93,複屈折が大きい。断口は亜貝殻状。
→関連項目菊花石
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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世界大百科事典(旧版)内のあられ石の言及
【アラゴナイト】より
…アラレ(霰)石ともいう。化学成分はCaCO3で[方解石]と多形をなす鉱物。…
【仮像】より
…この場合,化学組成が変化しない場合と変化する場合がある。前者の例としては,CaCO3の化学組成をもつアラレ石(斜方晶系,柱状となることが多い)が,その外形を保ったまま方解石(三方晶系)に変化する場合,すなわち化学組成は変化せず内部原子の配列が変化した場合である。後者の例としては,化学組成FeS2の黄鉄鉱(立方晶系,直方体・八面体をなすことが多い)が,その特有なシンチュウ色を失い褐色の針鉄鉱(化学組成FeO・(OH),斜方晶系,針状結晶,その放射状集合体)に変化することがある。…
※「あられ石」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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