火成岩を化学組成に基づいて分類したとき、二酸化ケイ素SiO2(シリカ、ケイ酸)の含有量が組成の50%前後を占める火成岩をさす。火成岩の化学組成は一般に金属元素の酸化物の重量%をもって表す習慣になっている。この場合、二酸化ケイ素の%がもっとも高くなるのが普通で、それは約40~80%に及ぶ。そこで、中性岩(52~66%)、酸性岩(66%以上)に比べて二酸化ケイ素の含有量が少なく50%前後(45~52%)を示す火成岩を化学組成の面から塩基性岩とよぶ。これには玄武岩、ドレライト(粗粒玄武岩)や斑糲(はんれい)岩が含まれる。火成岩の化学組成には緩い規則性があり、二酸化ケイ素の百分比で塩基性岩を定義すれば、それに伴って他の成分の量もほぼ限定される。塩基性岩ではアルミナAl2O3やアルカリ(Na2OとK2O)が乏しく、鉄(FeOとFe2O3)や酸化マグネシウムMgO(マグネシア)が多い。そこで、塩基性岩を苦鉄質岩あるいは鉄苦土質岩ということもあるが、両者は定義が異なるため厳密には同義ではない。苦鉄質岩は有色鉱物の体積%による分類の用語であり、塩基性岩は二酸化ケイ素の重量%による分類の用語である。苦や苦土は酸化マグネシウムのことである。また、塩基性岩から導かれた緑色片岩や、角閃(かくせん)岩なども、化学的特徴から塩基性変成岩とよばれることがある。なお、ここでいう塩基性とは、化学における酸や塩基などという用法とは関係がない。
[橋本光男・村田明広 2015年2月17日]
塩基性岩と比べて、さらに二酸化ケイ素の成分が45%以下と少ない岩石をいう。通常はこの岩石は石英や斜長石をほとんど含まないか、まったく含まず、橄欖(かんらん)石、単斜輝clinopyroxene、斜方輝石orthopyroxene、普通角閃石などの有色鉱物の一つ以上を主要構成鉱物とするが、黒雲母(くろうんも)、金雲母などを多量に含むものもある。超塩基性岩の多くは超苦鉄質岩ultramafic rock(超マフィック岩)であるが、霞岩(かすみがん)nepheliniteのように二酸化ケイ素の含有量が35%程度であるにもかかわらず、有色鉱物の含有が少ないため、超苦鉄質岩でないものがある。この超苦鉄質岩は、マグネシウムや鉄のケイ酸塩である有色鉱物が70%以上である岩石をさす。
おもに橄欖石からなり輝石などを伴う岩石を一般的に橄欖岩(ペリドタイトperidotite)とよぶ。橄欖岩をより細かく分類する場合は、主として橄欖石からなるものをダナイトdunite(ダン橄欖岩)、輝石からなるものを輝岩pyroxenite、角閃石からなるものを角閃石岩hornblenditeとよぶ。また、橄欖岩には橄欖石と斜方輝石に富むハルツバージャイトharzburgite、橄欖石が40%以上で斜方輝石と単斜輝石の両方が伴われるレールゾライトlherzolite、橄欖石と単斜輝石に富むウェールライトwehrliteなどがある。ダイヤモンドの母岩であるキンバーライトkimberlite(キンバレー岩)は、アルカリに富む超塩基性岩の一種である。
超塩基性岩は通常比重が3.2~3.5程度あって、たいへん重くかつ硬い。暗黒色ないし暗緑色のことが多いが、橄欖石が変質し蛇紋石化した蛇紋岩などでは緑色、淡緑色、淡黄色などさまざまなものがあり、比重も3.0以下のかなり低いものまである。蛇紋岩は地すべりや山崩れの誘因となることがある。この超塩基性岩にはニッケル、クロムなどの有用金属元素を多く含むものがあって稼行の対象となることがある。成因的には玄武岩質マグマから晶出した鉱物が岩体の下部に集積して層状分化岩体をつくり、超塩基性岩類や金属鉱床をつくることが多い。超塩基性のマグマも先カンブリア時代には存在しており、これからできた溶岩をコマチアイトkomatiiteとよぶ。また、地球内部のマントルは主として超塩基性岩類からできている。橄欖岩や蛇紋岩などの超塩基性岩は磨くと美しく、装飾に用いられる。その用途とされる代表例として茨城県常陸太田(ひたちおおた)市の斑(まだら)石、埼玉県秩父(ちちぶ)地方の国神(くにがみ)石、熊本県宇城(うき)市小川町と同市松橋(まつばせ)町の竹葉(ちくよう)石などがある。
[矢島敏彦・村田明広 2015年2月17日]
火成岩を化学組成によって分類したときSiO2を45~52重量%含む岩石,およびそれらが変成されてできた変成岩。この語に対置されるものとしてSiO2が66%以上のものを酸性岩というが,塩基性,酸性という語は化学ではpHの意味に使用され,これと関連しているように誤解される可能性もあるので,かわりに苦鉄質(苦はMgを意味する)あるいはマフィック(Mg,Feに富むという意味)という語を用いるほうがよい。塩基性というのはSiO2に基づく分類,苦鉄質というのはMg,Feに基づく分類で,両者は必ずしも一致するとはかぎらないが,ほとんどの場合は一致する。塩基性火山岩(あるいは細粒岩)としては玄武岩,ベイサナイトなど,半深成岩(あるいは中粒岩)としては粗粒玄武岩,深成岩(あるいは粗粒岩)としては斑レイ岩などがあげられる。それらはSiO2の量がほぼ等しく粒度や組織,産状を異にしている。主要な構成鉱物は輝石と斜長石であるが,カンラン石が含まれることも多い。塩基性の変成岩は上記の塩基性火成岩が変成をうけた結果で,変玄武岩またはメタベイサイト,変粗粒玄武岩またはメタドレライト,変斑レイ岩などと呼ばれる(メタとは〈変質した〉の意味)。構成鉱物は温度や圧力などの変成の条件により異なるが,多く含まれるものとしては緑泥石,アクチノセン石やホルンブレンドなどの角セン石,緑レン石,比較的Caに富む斜長石,斜方輝石,単斜輝石などである。
執筆者:永原 裕子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
火成岩のうち,その主要構成鉱物が,かんらん石,輝石,曹灰長石などからなるものの総称.代表的なものは玄武岩,はんれい岩である.SiO2の量は約50 ± 3% である.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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