日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハイドロタルカイト」の意味・わかりやすい解説
ハイドロタルカイト
はいどろたるかいと
hydrotalcite
マグネシウムおよびアルミニウムの含水塩基性炭酸塩鉱物。アルミニウムをFe3+、Cr3+、Mn3+などでそれぞれ置換した別種とともにハイドロタルカイト系を構成する。理想化学式はMg6Al2[(OH)16|CO3]・4H2Oであるので、CO2は理想組成のものでも7.29%(重量)にすぎない。なお、マグネシウムとアルミニウムの複水酸化物マイクスナー石meixneriteは理想化学式Mg6Al2(OH)18・4H2Oをもち、ハイドロタルカイトとは同構造であるが、合成実験では、両者の中間物も知られている。そのため、その中間物を炭酸塩に入れると、同構造で化学組成上連続するものが、複数の系統分類区分に属するという状態になるため、これを避ける目的で、本鉱のようにCO2の量の少ないものは、その存在を無視して水酸化物とみなすという見解もある。このような処置は、クゼル石kuzelite(Ca4Al2[(OH)12|SO4]・6H2O)についても行われており、これは系統分類上硫酸塩ではなく、水酸化物に入れられている。単位格子がa軸方向で2倍、c軸方向で3分の1倍になっているマナッセ石manasseiteとは同質異像関係にある。
自形の完全なものはないが、輪郭は六角板状。繊維状あるいは葉片状のこともある。超塩基性岩中に細脈をなして産する。日本では千葉県安房(あわ)郡鋸南(きょなん)町下佐久間から報告されている。共存鉱物は葉蛇紋石、ハイドロマグネサイト、方解石、苦灰石など。同定は白色葉片状の形態、一方向に完全な劈開(へきかい)。劈開片は撓(とう)性(たわむ性質)がある。滑石よりは粉末になりやすいが、識別が困難なこともある。英名は含水鉱物で滑石(talc)と類似した外観をもっているが、水分を含有することによる。
[加藤 昭]
ハイドロタルカイト(データノート)
はいどろたるかいとでーたのーと
ハイドロタルカイト
英名 hydrotalcite
化学式 Mg6Al2[(OH)16|CO3]・4H2O
少量成分 Fe3+
結晶系 三方
硬度 2
比重 2.11
色 無,白,わずかに褐色あるいは緑色を帯びることもある
光沢 真珠光沢に近いが,繻子(しゅす)光沢という表現が用いられることもある。繊維状のものは絹糸光沢
条痕 白
劈開 一方向に完全
(「劈開」の項目を参照)