デデコルクトの書(読み)デデコルクトのしょ

改訂新版 世界大百科事典 「デデコルクトの書」の意味・わかりやすい解説

デデ・コルクトの書 (デデコルクトのしょ)

トルコ遊牧民オグズ族の想像上の吟遊詩人デデ・コルクトDede Korkutによって語られる草原英雄叙事詩古代にさかのぼるオグズ族伝承を核心に,15世紀ころ現在の形態に完成された。中央アジアからカフカスをへてアナトリアにいたる遊牧世界を舞台とする12の物語から成り,散文体に詩や格言点綴されている。《オデュッセイア》に登場する一つ目巨人キュクロプスの物語など,オグズ族に接触した他民族の説話要素もとりいれている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「デデコルクトの書」の意味・わかりやすい解説

デデ・コルクトの書
ででこるくとのしょ
Dede Korkut Kitābi

トルコ系オグズ人の伝説的吟遊詩人デデ・コルクトによって語られた英雄叙事詩。中央アジアからカフカス、アゼルバイジャン、北東部アナトリアを舞台とし、イスラム化したトルコ人と近隣のキリスト教徒との戦闘を主題とする。オグズ人の始祖伝説オグズ・ナーメ』を受け継ぎ、『オデュッセイア』などオグズ人の接触した他民族の説話をも取り入れている。散文を主体とし、詩や格言をちりばめた12の物語からなり、オグズ人の信仰慣習、生活、言語、歴史など、イスラム化してまもないトルコ人の民衆文化を知るうえに貴重な材料を提供する。

[永田雄三]

『F. Sümer, A. E. Uysal, W. S. Walker (tr.)The Book of Dede Korkut (1972, Austin & London)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「デデコルクトの書」の意味・わかりやすい解説

デデ・コルクトの書
デデ・コルクトのしょ
Kitâb-i Dede Korkut

アゼルバイジャンと中央アジアのオグズ族の間で生れた史詩 (デスターン) の一つ。 15世紀末に書き記されたが,その起源は 10世紀までさかのぼれる。韻をふんだ散文体による当時の民衆口語で書かれている。全体として一つの構成をもちながら,それぞれに独立した 12の話から成り立ち,古いトルコ族の生活や慣習を伝えている。トルコ文学中の傑作といわれ,ドレスデンバチカンの図書館に写本がある。

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