改訂新版 世界大百科事典 「トビウサギ」の意味・わかりやすい解説
トビウサギ (跳兎)
springhare
Pedetes capensis
よく発達した後肢と長い尾をもち,姿がカンガルーに似た齧歯(げつし)目トビウサギ科の哺乳類。長い耳と大きな目をもつ丸い頭部はウサギに似る。前肢は短いが,5本の指に長くしっかりした爪が生え,穴掘りに適する。体の毛は長く,柔らかで,赤みのある褐色。尾の先半分は黒い。体長35~43cm,尾長37~47cm,体重3~4kg。アフリカのコンゴ民主共和国南部,ケニア南部から南アフリカにかけ分布する。乾燥した砂地に穴を掘って巣とし,夕方巣を出ると,カンガルーのように後肢でジャンプして,多いときにはひと晩に10~40kmを走り,植物の球根や根をおもに食べる。狭い地域にいくつも巣穴が集まっていて,集団生活をしているように見えるが,一つの巣穴にすむのは1頭か,つがいとその子からなる家族である。繁殖期は一定せず,雌は年に3回程度,100日前後の間隔で,1産1子を生む。妊娠期間は78~82日。子は体重250~300gで生まれ,1月半で離乳する。サンの重要な食物源として狩られ,毛皮も利用される。
執筆者:今泉 吉晴
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報