横谷(読み)オウコク(その他表記)transverse valley

デジタル大辞泉 「横谷」の意味・読み・例文・類語

おう‐こく〔ワウ‐〕【横谷】

山脈直角に横切る谷。一般に峡谷をなすことが多い。⇔縦谷じゅうこく

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精選版 日本国語大辞典 「横谷」の意味・読み・例文・類語

おう‐こくワウ‥【横谷】

  1. 〘 名詞 〙 褶曲(しゅうきょく)山脈の褶曲軸や、地層の走向に対してほぼ直角に走る谷。以前からあった川を横切ってできた褶曲山脈によって生じたり、また断層によって生じたりしたもの。吉野川大歩危(おおぼけ)小歩危(こぼけ)など。〔英和和英地学字彙(1914)〕

よこや【横谷】

  1. 姓氏の一つ。

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改訂新版 世界大百科事典 「横谷」の意味・わかりやすい解説

横谷 (おうこく)
transverse valley

山脈を直角に横切る谷のことで,山脈の延長方向と平行する縦谷longitudinal valleyに対する語。もとは,地層の走向に直角に交わる谷を意味した。一般に谷が深く,峡谷をなすことが多い。横谷を生じる原因としては次のようなものがある。山脈の延長方向と直交する方向の断層運動により断層谷を生ずる場合。断層に沿って選択浸食が働き断層線谷を生ずる場合(断層地形)。川の流路を横切って土地が隆起するときに川の下刻が地盤の隆起速度にうちかって,以前の流路を維持して形成された先行谷となって山地を横切る場合。また,浸食の復活により軟らかい被覆層が削られて,その下の基盤起伏とは無関係に発達してきた流路の途中に相対的に硬い部分の基盤岩石が山稜状の突出部として残った場合に,この突出部を横断してもとの流路を維持する表成谷または積載谷も横谷となる。長江揚子江)の三峡は楚西山地を横切る横谷であり,インダス川ブラフマプトラ川ヒマラヤ山脈を横切る。東北日本の盆地から日本海に注ぐ雄物川,最上川,阿賀野川などは山地を横切って流れている。これらの川は山脈の隆起量よりも川の下方浸食の速度がまさったために以前の流路を維持できたが,横谷の部分は峡谷をなすことが多い。横谷は交通路として重要である。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「横谷」の意味・わかりやすい解説

横谷
おうこく
transverse valley

山脈を横切る谷。河川が山脈をその走向と直角に横切るところでは深い峡谷をなす。その成因として,(1) 山脈が隆起する以前から存在した谷が,山脈の隆起速度より速く下刻を行い,その流路を保持した先行谷,(2) 山脈の形成によって出現した湖からあふれ出た流水によって下刻,形成されたもの,(3) 下流域からの谷頭浸食によるもの,(4) 断層に沿うもの,(5) 表生谷,などが考えられるが,このうちのどれであるかを断定することは困難な場合が多い。チベットからヒマラヤ山脈を横切ってガンジス川と合流するアルン川,東北日本の白神山地,出羽山地,越後山脈を横切って,横手,米沢などの内陸盆地から日本海へ注ぐ米代川,雄物川,最上川,阿賀野川などは好例。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「横谷」の意味・わかりやすい解説

横谷
おうこく

山脈を直角に横切る谷。縦谷に対する語。もとは地層の走向に直交する谷を意味した。一般に峡谷をなすことが多い。成因としては、山脈を横切る断層に沿って生じる断層谷や断層線谷、流路を横切って地盤が隆起を続けるときに下刻作用によって隆起以前の流路を維持する先行谷、侵食の復活により軟らかい被覆層が削られ基盤の突起部が現れた場合にこれを横切って以前の流路を維持する積載谷(せきさいこく)などがある。

[髙山茂美]

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百科事典マイペディア 「横谷」の意味・わかりやすい解説

横谷【おうこく】

先行谷

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世界大百科事典(旧版)内の横谷の言及

【谷】より

…谷壁斜面が垂直に近く,谷の幅の狭いものを峡谷という。山脈や地層の走向と平行に延びる谷を縦谷といい,山脈を横切る谷を横谷という。ヒマラヤ山脈とトランス・ヒマラヤ山脈の間を流れるブラフマプトラ川,インダス川の上流部は縦谷を成すが,両川ともヒマラヤ山脈を横切って流れ,横谷となる部分がある。…

※「横谷」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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