改訂新版 世界大百科事典 「トリガイ」の意味・わかりやすい解説
トリガイ (鳥貝)
egg cockle
Fulvia mutica
ザルガイ科の食用二枚貝。殻の長さ9.5cm,高さ9.5cm,幅6.5cmに達する。殻は薄く丸くよく膨らむ。幼貝では淡紅色の矢絣模様があるが,成長すると殻頂が紅色で腹縁へ向かって淡色になり,淡黄褐色の軟らかい殻皮が40~50条の細く浅い放射溝に沿って生える。内面は淡紅色から紅紫色である。かみ合せには殻頂の下に小さいきば状の歯があり,前・後縁に板状の長い側歯がある。軟体の足は黒紫色で長くて殻の中では折れ曲がっている。その形が雛鳥の足の形に似ているのでトリガイの名があるという(味が鳥に似るという説もある)。本州の陸奥湾から九州,朝鮮半島,中国沿岸の内湾に分布し,水深10~30cmの砂泥底にすみ,ときどき大発生をすることがある。プランクトンや浮遊有機物を食べる。産卵期は2~6月と8~11月。足は開いてすし種や酢の物として美味。近似種のイシガキガイは正しくはイシカゲガイClinocardium buellowiといい,主として九州から北海道の内湾に分布し,水深10~30mの砂泥底にすむ。肉は白く軟らかく,すし種となる。
執筆者:波部 忠重
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報