トレーサリー(英語表記)tracery

翻訳|tracery

精選版 日本国語大辞典 「トレーサリー」の意味・読み・例文・類語

トレーサリー

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] tracery ) ゴシック建築で用いる頂部が尖頭(せんとう)アーチ形をした窓の上部にはめ込まれた石のふちどり。窓を幾何学的、あるいは花や葉などの形に仕切る。その間にステンド‐グラスがはめられる。また、後期ゴシック様式で、木製壁面や仕切りに施された類似の彫刻飾装をいう。狭間飾(はざまかざり)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「トレーサリー」の意味・わかりやすい解説

トレーサリー
tracery

ロマネスク,とくにゴシック建築において窓の上部やばら窓にとりつけた,装飾的に発達した仕切りの骨組み。狭間飾(はざまかざり)ともいう。一般に石製だが,木製,金属製のものもあり,この骨組みと骨組み,骨組みと窓枠との間には,ステンド・グラスをはめる。12世紀までは薄い板石をくり抜いたプレート・トレーサリーplate traceryを用いたが,イタリアではこれに棒状の骨組みを加えた,ばら窓を造った。しかし,棒状の石材だけで造った,複雑な模様の本格的なトレーサリーであるバー・トレーサリーbar traceryを最初に用いたのはフランスのランス大聖堂で,これがその後の発展の起点となった。このトレーサリーはイギリスで直ちに採用されていちじるしく発達し,フランスをはじめヨーロッパ諸国に逆に大きな影響を与えた。中世末期にはトレーサリーは窓だけではなく,壁やボールトの表面などの装飾にも用いられた。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トレーサリー」の意味・わかりやすい解説

トレーサリー
tracery

建築用語。中世ヨーロッパ,特にゴシック建築の採光部にみられる幾何学模様装飾。石の板に模様を透かし彫にするプレート・トレーサリーと,直線あるいは曲線をなす石材を組合せて模様を構成するバー・トレーサリーの2種に大別され,次第に模様が複雑化していった。また広義にはイスラム建築などの採光部にみられる繊細な透かし彫の格子も含む。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

世界の電気自動車市場

米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...

世界の電気自動車市場の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android