日本大百科全書(ニッポニカ) 「ランス大聖堂」の意味・わかりやすい解説
ランス大聖堂
らんすだいせいどう
Cathédrale de Reims
フランス北東部、マルヌ県の副県都ランスにあり、シャルトル、アミアンの両大聖堂と並ぶ典型的なフランス・ゴシック聖堂の一つ。歴代フランス国王の多くが戴冠式(たいかんしき)を挙行した名刹(めいさつ)としても有名である。現存の建物はメロビング朝、カロリング朝に次いで、1210年の三度目の火災ののち建立されたものである。設計者はジャン・ドルベであろうといわれる。1211年に着工され、内陣と翼廊は1241年ごろ、身廊は1285年ごろ、そして西ファサードは14世紀に入って完成された。平面は三廊式身廊、三廊式翼廊、および五つの礼拝堂をもつ内陣部から成り立つが、礼拝堂が放射状に配列された内陣部の設計はイギリスの戴冠式聖堂ウェストミンスター寺院に反映している。ヨーロッパ中世を通じて最高の傑作とみなされる西ファサードの三つの玄関口の側面は、それぞれ大小の彫像で装われ、バラ窓の上部には歴代国王の立像がそれぞれニッチ(壁龕(へきがん))に納められ、いずれもフランス・ゴシック彫刻の代表例として知られている。側面の控壁(ひかえかべ)は横圧を支える構造上の役割を果たすとともに、大聖堂全体の構成にアクセントをもたせ、外観効果を高めている。なお、この聖堂は付近にあるサン・レミ教会、トウ宮殿とともに、1991年に世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。
[濱谷勝也]