日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドイツワイン」の意味・わかりやすい解説
ドイツワイン
どいつわいん
ドイツ産のワイン。ライン川およびその支流のモーゼル川流域にまたがるなだらかな谷に産するものが有名である。その他エルベ川、ザーレ川沿いにもワイン産地がある。生産量の大半は白ワインである。白のうち、一般にラインワインは甘口で、どっしりしており、モーゼルワインは繊細で軽やかであると評されている。前者は茶色の細長い瓶、後者は緑色の細長い瓶に詰められている。ライン、モーゼル以外の有名な地域にフランケンがあり、ここで生産されるワインはやや辛口で、容器は「ボックスボイテル」とよばれるずんぐりした、首の短い、緑色の扁平瓶である。ドイツで使われるブドウの品種はリースリングが有名で、最高の白ワインがこれからつくられる。その他ミュラー・トゥルガウ、トラミネール、シルバーネル種などが使われる。
[原 昌道]
ラインワイン
ドイツのライン川流域で産するワインの総称で、別名ホックともいう。ラインガウ、ラインヘッセン、プファルツ、ナーエ地域が主産地である。ラインガウはライン川の北岸に沿った比較的小さな地域だが、ドイツワインの宝庫といわれており、有名なブドウ園が多い。そのなかにはドイツワインの最高峰の品質を産するマルコブルン(聖マルクの泉)、カビネットワインの名前の発祥地として知られるシュタインベルガー、古い塔のあるシュロス・フォルラーツ、最優良酒を産するシュロス・ヨハニスベルク、ブドウ醸造研究所のあるガイセンハイムなどがある。ラインガウの対岸にあるラインヘッセン地域はドイツ最大の栽培地域で、おもにミュラー・トゥルガウ種とシルバーネル種のブドウを使っており、軽い白ワインを産し、世界的に名のとおった大衆酒のリープフラウミルヒ(聖母の乳)がある。またプファルツは面積が広く、ワインの倉庫といわれており、フォルスト村やダイデスハイム村で貴腐ワインの最高級品がつくられている。ナーエ地区はラインとモーゼルの間にあり、ワインも両系統の中間の特徴をもっている。
[原 昌道]
モーゼルワイン
ドイツのモーゼル川と、その支流のザール川、ルーバー川流域でつくられるワインの総称。この地域はブドウ栽培としては北端にあたり、日照時間が少なく、ときとしては糖分が不足する場合がある。モーゼル川流域にある主要なブドウ園村のうち、もっとも知られているのはピースポート村で、ここのワインは「モーゼルの女王」といわれ、ゴールドトレップフェンなどの有名ブドウ園が多い。またベルンカステル村からは世界的に名の知れたドクトールを産する。ザール川流域ではビルティンゲン村のシャルツホッフベルガーが最良とされている。モーゼルにはこのほか、モーゼルブリュンヒェン(モーゼルの小さな花)やシュバルツェ・カッツ(黒猫)などのワインがあり、多くの人たちに愛飲されている。
なおドイツワインは、おもにブドウ果汁の糖度によって、品質分類と格付け区分が決められている。
[原 昌道]
『江戸西音著『ドイツワイン全書』(1985・柴田書店)』