ドノソ(読み)どのそ(その他表記)José Donoso

デジタル大辞泉 「ドノソ」の意味・読み・例文・類語

ドノソ(José Donoso)

[1924~1996]チリ小説家社会問題同性愛テーマとした作品で知られる。作「夜のみだらな鳥」「この日曜日」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドノソ」の意味・わかりやすい解説

ドノソ
どのそ
José Donoso
(1924―1996)

チリの小説家。10月5日首都サンティアゴに生まれる。医者の長男として名門校に入ったが19歳のとき中退、南米南端の各地を放浪し、23歳で改めて高校を卒業、チリ大学に進み、さらにプリンストン大学へ留学、英文学を学んだ。帰国後、英語教師をしながら本格的に小説と取り組み、1955年に短編集『避暑』を自費出版し、サンティアゴ市短編文学賞を得た。第二短編集『二つの物語』(1956)、長編戴冠式(たいかんしき)』(1957)を出したあと、ブエノス・アイレスを訪れ、ボルヘスをはじめとする新しい文学の息吹に触れた。60年に帰国し、『エルシージャ』誌の文芸批評を担当、短編集『チャールストン』(1960)を書いたが、古い文学的伝統に縛られたチリを離れ、64年メキシコに移り、中編『境のない土地』(1966)、『この日曜日』(1966)を発表した。その後アメリカのアイオワ大学に籍を置いたが、67年スペインに渡り、マジョルカ島を経てバルセロナに落ち着いてから、構想以来8年の歳月を費やした大作『夜のみだらな鳥』(1970)を完成、ラテンアメリカ有数の作家の地位を確立した。ここに至るドノソの小説家としての歩みは、60年代に花開いたラテンアメリカ文学の軌跡を分析した評論『ラテンアメリカ文学ブーム』(1972)に詳しい。その後の作品に短編集『ブルジョア小説三編』(1973)、長編『別荘』(1978)、中編『ロリア侯爵夫人の謎(なぞ)の失踪(しっそう)』(1980)、長編『隣家の庭』(1981)、中編集『デルフィナのための四重奏』(1983)がある。

[内田吉彦]

『鼓直訳『ラテンアメリカの文学11 夜のみだらな鳥』(1984・集英社)』『内田吉彦訳『ラテンアメリカ文学のブーム――一作家の履歴書』(1983・東海大学出版会)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ドノソ」の意味・わかりやすい解説

ドノソ
Donoso, José

[生]1924.10.5. サンチアゴ
[没]1996.12.7. サンチアゴ
チリの小説家。短編集『避暑』 Veraneo y otros cuentos (1955) で認められ,以後『戴冠式』 Coronación (57) ,『この日曜日』 Este domingo (66) ,『境のない土地』 El lugar sin límites (67) ,『ブルジョア小説3編』 Tres novelitas burguesas (73) などの小説を次々に発表。代表作は,怪奇的な雰囲気にあふれた館と修道院にうごめく異形の人々の醜悪な生を描く形で,あらゆる階層に及ぶチリ社会の退廃を突いた『夜のみだらな鳥』 El obsceno pájaro de la noche (70) 。ほかに,エッセー『ブーム私史』 Historia personal del "boom" (72) ,戯曲『いまいましい夢』 El sueño de mala muerteがある。

ドノソ
Donoso, José Ximenez

[生]1628. コンスエグラ
[没]1686. マドリード
スペインの画家,建築家。6年間イタリアで学んだのちマドリードに定住。 P.ベロネーゼの様式を継ぐ強烈な色彩でマドリードの諸聖堂を飾った。

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百科事典マイペディア 「ドノソ」の意味・わかりやすい解説

ドノソ

チリの作家。サンティアゴのイギリス系の学校で教育を受け,その後アメリカの大学に留学。短編作家として1950年代にデビューし,処女長編《戴冠式》(1957年)で高い評価を受ける。引き続き《この日曜日》《境のない場所》(以上1966年)などの長編を発表した。代表作はブルジョア社会の没落と頽廃を描いた長編《夜のみだらな鳥》(1970年)。その他ラテン・アメリカ文学のブームについてのエッセー《ブームの履歴書》(1972年),バルセロナに亡命した作家とその家族を描いた長編《隣合せの庭》(1981年)などがある。

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