日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドロマエオサウルス」の意味・わかりやすい解説
ドロマエオサウルス
どろまえおさうるす
dromaeosaur
[学] Dromaeosaurus albertensis
竜盤目獣脚類(亜目)テタヌラ類(下目)鳥獣脚類Avetheropodaコエルロサウルス類Coelurosauriaマニラプトル形類Maniraptoriformesマニラプトル類Maniraptoraエウマニラプトル類Eumaniraptoraドロマエオサウルス科Dromaeosauridaeに属する恐竜。北アメリカの白亜紀後期、約7700万年~6700万年前の地層から産出した小形の肉食恐竜。全長約1.8メートル、推定体重15キログラム。有名な白亜紀前期のデイノニクスDeinonychusや白亜紀後期のベロキラプトルVelociraptorを含むドロマエオサウルス科のもとになった属であるが、彼らの共通の特徴の一つは、足の第2指にある強くカーブした鉤(かぎ)づめである。先がとがり内縁はナイフのように鋭いので、歩くときには地面から持ち上げていたことが、関節の産状化石からも確かめられている。ドロマエオサウルス類では歯の前縁と後縁でぎざぎざが同大なのに、ベロキラプトル類では後縁のほうが非常に大きい。ドロマエオサウルスのほうは頭骨がきわめて頑丈で、歯が大きく前歯の間口が広い。頭の幅がはるかに広く、鼻先より頬(ほお)がずっと幅広なので目は正面を向き立体視できた。こういう特徴はティラノサウルス類に似ているので、ティラノサウルスTyrannosaurus同様に攻撃手段を頭部に集中してもっていたであろう。したがって、獲物に飛びついたあとベロキラプトル類のように足つめで切り裂くのではなく、たぶんかみついたと思われる。むろん鎌(かま)状鉤づめは護身用にはなったはずである。両属とも後ろに傾いた腸骨が短く、膝(ひざ)に小さなうねがあり、飛び上がるのが得意なので、獲物と平行に走り、背中に飛びつき、鉤づめで傷をつけ、飛び降りたりしたであろう。尾の骨全体が棒状に融合し、第1尾椎(びつい)の構造により、尾を付け根から90度も持ち上げて体のバランスをとることもできる。もっとも重要なのは始祖鳥との共通点が多いことで、その一つは骨盤である。たとえば長い恥骨(ちこつ)が後方に伸び、先端の曲部の断面が三角形をなす。肩や前肢、手首、手のつくり、尾などもそっくりなので、始祖鳥的な形態が大形化して空を飛ばなくなるとドロマエオサウルス的な形が導かれる。
[小畠郁生]