日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドーセ」の意味・わかりやすい解説
ドーセ
どーせ
Jean Dausset
(1916―2009)
フランスの免疫学者。医師の息子としてトゥールーズに生まれる。パリ大学医学部に入学したが、第二次世界大戦が勃発(ぼっぱつ)、北アフリカで自由フランス軍の軍医として従軍した。1945年パリ大学で医学の学位を取得、国立輸血センターの研究部長を務め、1948年には一時ハーバード大学に留学した。1958年にパリ大学の血液学助教授となり、1963年教授に昇格した。1977年コレージュ・ド・フランスの実験医学の主任教授となり1987年まで務めた。
輸血を受けた患者に白血球に対する抗体(抗白血球抗体)が産生される現象を1952年に報告し、その後も多数の抗白血球抗体を発見した。そして、この抗体に反応する抗原(HLA:human leukocyte antigen、ヒト白血球抗原)が、G・D・スネルによってマウスで発見されたH‐2遺伝子(抗原)に相当することを示した。ドーセはHLAの研究をさらに進め、組織(臓器)の移植の成功には提供者と受容者のHLA抗原の一致が重要であることを明らかにした。のちにB・ベナセラフにより、HLAの複雑な働きが解明された。1980年に「免疫を調節する、遺伝的に決定された細胞表面の構造に関する発見」により、スネル、ベナセラフとともにノーベル医学生理学賞を受賞した。
[編集部 2018年9月19日]