ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ナムク・ケマル」の意味・わかりやすい解説
ナムク・ケマル
Namık Kemal
[没]1888.12.2. キオス島
トルコの民族主義思想家,詩人,小説家,劇作家。本名 Mehmet。トルコに近代ヨーロッパの思想を導入し,「自由主義の父」と呼ばれる。テキルダーの名門の出身。シナースィを知り,民族主義的な新聞『世論の注釈』 Tasvîr-i Efkârの主筆となって活躍した。 1865年「新オスマン人」協会に入ってスルタンの専制を批判したため,追われてヨーロッパへ亡命。 70年帰国後も反専制運動をやめず,再びキプロスへ追放された。戯曲『哀れな子供』 Zavalli Çocuk (1873) ,『アーキフ・ベイ』 Âkif Bey (74) はここで書かれた。 76年立憲政治が開かれると,イスタンブールに戻り,憲法作成委員の一人となった。立憲政治が短期間で挫折し,スルタンの専制政治が復活するとキオス島へ流され,同地で没した。戯曲『祖国あるいはスィリストレ』 Vatan Yahut Silistre (73) は若い民族主義者たちに大きな影響を与えた。またイスラムの伝統を近代世界に適応させることにも努力した。
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