改訂新版 世界大百科事典 「ナンブソウ」の意味・わかりやすい解説
ナンブソウ
Achlys triphylla ssp. japonica(Maxim.) Kitam.
繊細なメギ科の多年草。ナンブソウという名は,岩手県の南部地方で最初に採集されたことによる。地中を走る地下茎は細い。葉は1枚で根生し,3小葉からなり,中央小葉はひし形状卵形,左右両小葉はゆがんだ三角形。穂状花序にたくさんの花がつく。花は7~12本のおしべと1本のめしべだけからなり,萼片も花弁もない。子房には1個の胚珠がある。果実は裂開せず,中に1個の種子がある。日本では,東北地方,北海道に分布し,他に北朝鮮からも報告がある。北アメリカ西部には同種の別亜種ssp.triphylla(英名vanilla leaf,dearfoot)が分布している。北アメリカでは二倍体と四倍体が知られ,四倍体を別種とする見解もある。
メギ科の中では特異な形質をもつが,花粉の形態,花の解剖学的特徴から,タツタソウ属やジェファーソニア属と類縁があると考えられている。
執筆者:寺林 進
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