ニガキ(読み)にがき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニガキ」の意味・わかりやすい解説

ニガキ
にがき / 苦木
[学] Picrasma quassioides Bennett

ニガキ科(APG分類:ニガキ科)の落葉高木。日本、朝鮮半島、台湾、中国(黄河以南)、インドに分布する。高さ12メートル、幹の周囲1.2メートルに達する。葉は互生し、長さ20~30センチメートルの奇数羽状複葉。小葉は5~6対で長さ6~8センチメートル。長卵形あるいは卵状披針(ひしん)形で先は長くとがり、縁(へり)に鋸歯(きょし)がある。雌雄異株で、花は4~5個の小さい萼片(がくへん)と緑色の花被(かひ)をもち、夏に小枝葉腋(ようえき)から長い柄を出して円錐(えんすい)花序をつける。雄花は4~5個の雄蕊(ゆうずい)(雄しべ)と退化雌蕊(雌しべ)1個、雌花は4~5個の不完全雄蕊と雌蕊1個をもつ。子房が裂けているので核果は3~4個になる。核果は楕円(だえん)形で種子を1個ずつもち、成熟すると黒色を呈する。全体に苦味をもつが、これは苦味質のカッシンを含有するためである。

 日本では材を苦木(くぼく)またはニガキと称して、苦味健胃剤として消化不良、胃炎、食欲不振などの治療に用いる。中国では幹皮と根皮を苦樹皮(くじゅひ)と称して清熱、解毒、殺虫剤として細菌性下痢、胃腸病、胆道炎、回虫病、疥癬(かいせん)、湿疹(しっしん)、湯火傷などの治療に用いる。なお、薬理作用はセンダンMelia azedarach L.の樹皮(苦楝皮(くれんぴ))と同じであるため、混用されることもある。インドでは樹皮と葉を解熱、殺虫剤とするほか、葉を疥癬の治療、皮の煎液(せんえき)をウシのノミ取り、果実を健胃剤として用いる。

 中南米産のニガキ科別属の幹をカッシア木(ぼく)Quassiaといい、ニガキと同様に用いる。市場品にはスリナム・カッシア、ジャマイカ・カッシアの2種がある。

[長沢元夫 2020年10月16日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ニガキ」の意味・わかりやすい解説

ニガキ(苦木)
ニガキ
Picrasma quassioides

ニガキ科の落葉小高木。アジアの温帯から暖帯に広く分布し,日本では各地の山や原野に生える。小枝は赤褐色で,芽も同色の毛でおおわれる。葉は5~9対の長楕円形の小葉から成る奇数羽状複葉で互生し,全体の長さは柄とともに 30cmあまりとなる。小葉は長さ4~10cmの楕円形で鋸歯があり,左右は不対称である。夏に,葉腋に集散花序をなして黄緑色の小花を多数つける。雌雄異株で,雄花には4~5本のおしべと退化した子房が,また雌花には4~5裂しためしべと退化したおしべがそれぞれある。果実はゆがんだ楕円状の核果で黄緑色に熟する。全株に苦みがあり,木部を乾燥したものを苦木といって,そのエキスを健胃剤,消化不良,胃炎などの薬用にする。

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