疥癬は、ヒゼンダニ(
肌と肌が直接触れることで感染するため、これまでは性行為に伴う感染が多かったのですが、近年は高齢者の介護行為などを介して感染し、施設内や家族内で流行することがあるので問題になっています。
ヒゼンダニは体長0.2~0.4㎜の小さなダニ(図90)で、肉眼ではほとんど確認できません。雌成虫は皮膚の角質層内に潜り込んで長さ数㎜~程度の坑道(疥癬トンネル)をつくり、そのなかで産卵します。卵は
ヒゼンダニに寄生されてから1~2カ月の無症状期間をへて、
抵抗力が低下している人では、全身が赤くなったり、皮膚がザラザラして厚いカサブタをつけた重症型の角化型疥癬になることがあります。角化型疥癬の場合は皮膚に多量のヒゼンダニが存在するため、肌が触れなくても剥がれたカサブタが飛散して感染し、集団発生のもとになるので注意が必要です。
皮膚科で顕微鏡や拡大鏡を用いた検査をして、ヒゼンダニの虫体や卵が見つかれば診断確定です。
イオウ外用薬あるいはイオウサリチル酸チアントール軟膏を全身に外用して24時間後に洗い流すことを5日間続けます。クロタミトン軟膏(オイラックス)を全身に塗布し、1~2週間続ける方法もあります。
外用薬による治療が不十分な場合や角化型疥癬では、内服薬としてイベルメクチンを併用します。
市販薬などで自己治療せず、皮膚科を受診して治療を受けてください。また、生活をともにしている家族や同僚などに同じ症状が出ていないか確認し、感染の拡大を防ぐことが重要です。
夏秋 優
ヒト
紅色~暗赤色の小結節(
前記の症状のほか、角質が数㎜にわたって隆起した疥癬トンネルも診断の参考になります。小丘疹や
外用薬が有効です。クロタミトン軟膏(オイラックス軟膏)、硫酸サリチルアントール軟膏(アストール軟膏)、駆除薬のフェノトリン製剤(スミスリンパウダー)散布のほか、
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
ヒゼンダニSarcoptes scabieiの感染により発症する皮膚病。〈皮癬〉ともいい,古くギリシア・ローマ時代から知られていた。日本では戦後1945-46年ごろに大流行したが,以後激減したものの散発的に発生している。患者との性行為などによる直接接触感染(性行為感染症)のほか,寝具,衣類を介しても感染するため家族内,グループ,病院内での感染も少なくない。虫体は0.2~0.4mmで,雌の成虫が受精すると表皮の角質層内に疥癬トンネルを作り,その盲端に産卵する。孵化(ふか)すると3回脱皮して,10~14日で成虫になり体表に出る。症状としては,指間,四肢屈側,腋窩(えきか),臍部(さいぶ),外陰部など皮膚の柔らかい部分に小水疱,膿疱を混じたアワ粒大の紅色の丘疹が播種状に密にみられ,とくに指間では疥癬トンネルが数mmの細い線条として発見される。陰部ではダイズ大までの扁平に隆起する硬い小結節も作ることが多い。かゆみは著しく,とくに夜間に激烈なことが多い。治療は,寝具,衣類の熱湯消毒,日光消毒を行って他への感染を防ぐとともに,皮疹には硫黄浴,クロタミトン含有軟膏,安息香酸ベンジル液,γ-BHC含有剤の塗布が有効である。
執筆者:原田 敬之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
疥癬虫(ヒゼンダニ)が人の皮膚に寄生するために発生する皮膚疾患で、俗に「ひぜん」とよばれている。患者との性交のほか、寝床を同じくすると感染するので、性感染症(準性病)に含められているが、家族内感染や宿舎内感染もある。栄養摂取や衛生状態の悪かった第二次世界大戦後非常に流行したが、その後まったく消滅した。しかし、海外旅行が急激に増えた1970年代になってふたたび流行が始まり、なお続いている。これは疥癬虫に特効的なDDTやBHCにかわるものがまだないことにもよる。古典的な症状としては、皮膚の柔らかい指間、四肢屈側、わきの下、乳房下、下腹部、外陰部の皮膚に数ミリメートルの長さの細い線状の高まり(疥癬トンネル)ができ、その中で0.4ミリメートル前後の雌の疥癬虫が産卵する。しかし近年流行している疥癬の症例では、疥癬トンネルが認められるものが少なく、大半は虫刺されや湿疹(しっしん)に似た赤い隆起が体幹を中心とした前述の各部位に多発する。強いかゆみのために夜間の不眠をきたすことも多い。まれに全身状態のよくない場合には、角質がカキ殻状に厚く増殖するノルウェー疥癬がみられるが、この角層内には多数の虫体と虫卵が含まれている。治療には、クロタミトン軟膏(なんこう)、安息香酸ベンジル、硫黄(いおう)軟膏などが使われる。
[岡本昭二]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…かゆくなる皮膚の病気には皮膚瘙痒症のほかに,以下のようなものがある。疥癬(かいせん)も激しいかゆみをおこすが,このかゆみは夜とくに強くなって安眠を妨げる。皮膚に原因のあるかゆみは,その上皮層あるいはそれよりも深い真皮層外層部がおかされたときにみられる。…
※「疥癬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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