翻訳|scabies
ヒゼンダニSarcoptes scabieiの感染により発症する皮膚病。〈皮癬〉ともいい,古くギリシア・ローマ時代から知られていた。日本では戦後1945-46年ごろに大流行したが,以後激減したものの散発的に発生している。患者との性行為などによる直接接触感染(性行為感染症)のほか,寝具,衣類を介しても感染するため家族内,グループ,病院内での感染も少なくない。虫体は0.2~0.4mmで,雌の成虫が受精すると表皮の角質層内に疥癬トンネルを作り,その盲端に産卵する。孵化(ふか)すると3回脱皮して,10~14日で成虫になり体表に出る。症状としては,指間,四肢屈側,腋窩(えきか),臍部(さいぶ),外陰部など皮膚の柔らかい部分に小水疱,膿疱を混じたアワ粒大の紅色の丘疹が播種状に密にみられ,とくに指間では疥癬トンネルが数mmの細い線条として発見される。陰部ではダイズ大までの扁平に隆起する硬い小結節も作ることが多い。かゆみは著しく,とくに夜間に激烈なことが多い。治療は,寝具,衣類の熱湯消毒,日光消毒を行って他への感染を防ぐとともに,皮疹には硫黄浴,クロタミトン含有軟膏,安息香酸ベンジル液,γ-BHC含有剤の塗布が有効である。
執筆者:原田 敬之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
疥癬虫(ヒゼンダニ)が人の皮膚に寄生するために発生する皮膚疾患で、俗に「ひぜん」とよばれている。患者との性交のほか、寝床を同じくすると感染するので、性感染症(準性病)に含められているが、家族内感染や宿舎内感染もある。栄養摂取や衛生状態の悪かった第二次世界大戦後非常に流行したが、その後まったく消滅した。しかし、海外旅行が急激に増えた1970年代になってふたたび流行が始まり、なお続いている。これは疥癬虫に特効的なDDTやBHCにかわるものがまだないことにもよる。古典的な症状としては、皮膚の柔らかい指間、四肢屈側、わきの下、乳房下、下腹部、外陰部の皮膚に数ミリメートルの長さの細い線状の高まり(疥癬トンネル)ができ、その中で0.4ミリメートル前後の雌の疥癬虫が産卵する。しかし近年流行している疥癬の症例では、疥癬トンネルが認められるものが少なく、大半は虫刺されや湿疹(しっしん)に似た赤い隆起が体幹を中心とした前述の各部位に多発する。強いかゆみのために夜間の不眠をきたすことも多い。まれに全身状態のよくない場合には、角質がカキ殻状に厚く増殖するノルウェー疥癬がみられるが、この角層内には多数の虫体と虫卵が含まれている。治療には、クロタミトン軟膏(なんこう)、安息香酸ベンジル、硫黄(いおう)軟膏などが使われる。
[岡本昭二]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
字通「疥」の項目を見る。
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…かゆくなる皮膚の病気には皮膚瘙痒症のほかに,以下のようなものがある。疥癬(かいせん)も激しいかゆみをおこすが,このかゆみは夜とくに強くなって安眠を妨げる。皮膚に原因のあるかゆみは,その上皮層あるいはそれよりも深い真皮層外層部がおかされたときにみられる。…
※「疥癬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
《「晋書」杜預伝から》竹が最初の一節を割るとあとは一気に割れるように、勢いが激しくてとどめがたいこと。「破竹の勢いで連戦連勝する」[類語]強い・強力・強大・無敵・最強・力強い・勝負強い・屈強・強豪・強...