疥癬(読み)かいせん(英語表記)Scabies

翻訳|scabies

六訂版 家庭医学大全科「疥癬」の解説

疥癬
かいせん
Scabies
(皮膚の病気)

どんな病気か

 疥癬は、ヒゼンダニ疥癬虫(かいせんちゅう))と呼ばれるダニが皮膚表面の角質層に寄生して起こる感染症です。

 肌と肌が直接触れることで感染するため、これまでは性行為に伴う感染が多かったのですが、近年は高齢者の介護行為などを介して感染し、施設内や家族内で流行することがあるので問題になっています。

原因は何か

 ヒゼンダニは体長0.2~0.4㎜の小さなダニ(図90)で、肉眼ではほとんど確認できません。成虫は皮膚の角質層内に潜り込んで長さ数㎜~程度の坑道(疥癬トンネル)をつくり、そのなかで産卵します。卵は孵化(ふか)して幼虫、若虫をへて約2週間で成虫になり、雄・雌は皮膚で交尾します。成虫は人肌を離れると短時間で死滅しますが、疥癬患者の使用した寝具類を1日以内に使うと感染する可能性があります。

症状の現れ方

 ヒゼンダニに寄生されてから1~2カ月の無症状期間をへて、(わき)の周囲や腹部、陰部などにぶつぶつが現れます。かゆみが強く、とくに夜に増強するのが特徴です。手首や手指の間には、疥癬トンネルと呼ばれる細くて灰白色で長さ数㎜前後の線状の皮疹(ひしん)がみられます。

 抵抗力が低下している人では、全身が赤くなったり、皮膚がザラザラして厚いカサブタをつけた重症型の角化型疥癬になることがあります。角化型疥癬の場合は皮膚に多量のヒゼンダニが存在するため、肌が触れなくても剥がれたカサブタが飛散して感染し、集団発生のもとになるので注意が必要です。

検査と診断

 皮膚科で顕微鏡や拡大鏡を用いた検査をして、ヒゼンダニの虫体や卵が見つかれば診断確定です。

治療の方法

 イオウ外用薬あるいはイオウサリチル酸チアントール軟膏を全身に外用して24時間後に洗い流すことを5日間続けます。クロタミトン軟膏(オイラックス)を全身に塗布し、1~2週間続ける方法もあります。

 外用薬による治療が不十分な場合や角化型疥癬では、内服薬としてイベルメクチンを併用します。

病気に気づいたらどうする

 市販薬などで自己治療せず、皮膚科を受診して治療を受けてください。また、生活をともにしている家族や同僚などに同じ症状が出ていないか確認し、感染の拡大を防ぐことが重要です。

夏秋 優


疥癬
かいせん
Scabies
(女性の病気と妊娠・出産)

どんな病気か

 ヒト疥癬(かいせんちゅう)による感染症です。疥癬虫が皮膚の角質層内に寄生することによって発症し、外陰部のほか下腹部、乳房下部、指の間などの皮膚の軟らかい部分に好発します。疥癬虫は角質内でトンネルを掘って産卵します。寝具などを通して感染し、集団で発症することが少なくありません。

症状の現れ方

 紅色~暗赤色の小結節(丘疹(きゅうしん))が多発し、激しいかゆみを生じます。このため、かき壊してしまうことが多く、細菌による二次感染も併発してきます。

検査と診断

 前記の症状のほか、角質が数㎜にわたって隆起した疥癬トンネルも診断の参考になります。小丘疹や小水疱(しょうすいほう)を採取し、顕微鏡下で虫卵、虫体がみつかれば、診断できます。集団で発症していることも診断の目安になります。

治療の方法

 外用薬が有効です。クロタミトン軟膏(オイラックス軟膏)、硫酸サリチルアントール軟膏(アストール軟膏)、駆除薬のフェノトリン製剤(スミスリンパウダー)散布のほか、硫黄(いおう)剤を用いた入浴などが有効です。

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日本大百科全書(ニッポニカ)「疥癬」の解説

疥癬
かいせん

疥癬虫(ヒゼンダニ)が人の皮膚に寄生するために発生する皮膚疾患で、俗に「ひぜん」とよばれている。患者との性交のほか、寝床を同じくすると感染するので、性感染症(準性病)に含められているが、家族内感染や宿舎内感染もある。栄養摂取や衛生状態の悪かった第二次世界大戦後非常に流行したが、その後まったく消滅した。しかし、海外旅行が急激に増えた1970年代になってふたたび流行が始まり、なお続いている。これは疥癬虫に特効的なDDTやBHCにかわるものがまだないことにもよる。古典的な症状としては、皮膚の柔らかい指間、四肢屈側、わきの下、乳房下、下腹部、外陰部の皮膚に数ミリメートルの長さの細い線状の高まり(疥癬トンネル)ができ、その中で0.4ミリメートル前後の雌の疥癬虫が産卵する。しかし近年流行している疥癬の症例では、疥癬トンネルが認められるものが少なく、大半は虫刺されや湿疹(しっしん)に似た赤い隆起が体幹を中心とした前述の各部位に多発する。強いかゆみのために夜間の不眠をきたすことも多い。まれに全身状態のよくない場合には、角質がカキ殻状に厚く増殖するノルウェー疥癬がみられるが、この角層内には多数の虫体と虫卵が含まれている。治療には、クロタミトン軟膏(なんこう)、安息香酸ベンジル、硫黄(いおう)軟膏などが使われる。

[岡本昭二]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「疥癬」の解説

疥癬
かいせん
scabies

ひぜんともいう。ヒト疥癬虫 (ヒゼンダニ ) の感染による。躯幹 (特に下腹部,外陰部) や四肢 (特に手指,指間) に左右対称に赤色小丘疹が多発し,ときに小水疱化し,また膿疱化する。皮疹に一致して疥癬トンネルがあり,中に虫体,虫卵,糞がある。虫体は夜間トンネルから出て活動し,このために激しいかゆみを生じる。主として接触により感染するが,衣類や寝具を介しても感染する。近年は性行為感染症 (STD) の一つとみなされている。このほか不潔生活者,栄養失調者,長期臥床者などの場合に,疥癬虫感染により手足に角化性病変が生じることがあり,これはノルウェー疥癬と呼ばれている。また,イヌやネコなどのペットと接触した際,動物疥癬虫に刺されて激しいかゆみを伴う小丘疹が生じることがあるが,動物疥癬虫が人体に寄生することはない。

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百科事典マイペディア「疥癬」の解説

疥癬【かいせん】

皮癬(ひぜん)ともいう。カイセンチュウ(ヒゼンダニ)の表皮内寄生による皮膚病。アワ粒大の丘疹,水痘ができ,かゆみが激しい。かくことにより,ときに化膿(かのう)菌感染を合併する。手指の間,わきの下,乳房の下,陰部,踝(くるぶし)付近などに好発する。皮膚の直接接触によって感染し,家族内伝染,集団生活伝染が多く,戦時中などにはよくみられたが,今日ではまれ。予防は清潔が第一で,治療は主として硫黄剤やクロタミトン塗布(とふ)。

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精選版 日本国語大辞典「疥癬」の解説

かい‐せん【疥癬】

〘名〙 伝染性皮膚病の一つ。指の間、手足の関節の内側、大腿部の内側、乳房の下、下腹部、陰部などにできる淡紅色、または肌色の小さな丘疥(きゅうかい)。先端に小さな水疱や膿をもつこともある。夜間、激しいかゆみがあり、不眠の原因となる。ヒゼンダニの寄生によっておこる。皮癬(ひぜん)疥瘡
※本朝文粋(1060頃)二・意見十二箇条〈三善清行〉「凡厥蠧害。非唯疥癬」 〔国語‐呉語〕

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デジタル大辞泉「疥癬」の解説

かい‐せん【××癬】

疥癬虫(ヒゼンダニ)の寄生によって起こる伝染性の皮膚病。下腹部・わきの下・内またなどに散発する赤い丘疹きゅうしん、指の間に多発する小水疱しょうすいほう水膿疱すいのうほうと線状の皮疹などが特徴で、非常にかゆい。馬・メンヨウヤギなどにも発生し、家畜伝染病予防法監視伝染病届出伝染病)の一。湿瘡しっそう皮癬ひぜん

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世界大百科事典 第2版「疥癬」の解説

かいせん【疥癬 scabies】

ヒゼンダニSarcoptes scabieiの感染により発症する皮膚病。〈皮癬〉ともいい,古くギリシア・ローマ時代から知られていた。日本では戦後1945‐46年ごろに大流行したが,以後激減したものの散発的に発生している。患者との性行為などによる直接接触感染(性行為感染症)のほか,寝具,衣類を介しても感染するため家族内,グループ,病院内での感染も少なくない。虫体は0.2~0.4mmで,雌の成虫が受精すると表皮の角質層内に疥癬トンネルを作り,その盲端に産卵する。

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世界大百科事典内の疥癬の言及

【痒み】より

…かゆくなる皮膚の病気には皮膚瘙痒症のほかに,以下のようなものがある。疥癬(かいせん)も激しいかゆみをおこすが,このかゆみは夜とくに強くなって安眠を妨げる。皮膚に原因のあるかゆみは,その上皮層あるいはそれよりも深い真皮層外層部がおかされたときにみられる。…

※「疥癬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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