翻訳|bittern
海水または鹹水(かんすい)を濃縮して塩を採取した残りの比重1.3程度の粘稠(ねんちゆう)な溶液。主成分は塩化マグネシウムで,独特な刺激のある苦みを有する。にがりは豆腐の凝固剤として古くから使用され,安政(1854-60)のころからボウ硝(硫酸ナトリウムの10水塩)の製造も行われてきた。しかし,にがり工業と名付けられる形態を整えたのは,明治の末ごろで,まず炭酸マグネシウムの製造が始まった。続いて第1次世界大戦後のカリ塩の欠乏により1915年ごろからカリの採取が始まった。また32年ごろから金属マグネシウムの製造が実用化されるとその原料となり,第2次世界大戦中では,臭素,金属マグネシウム,塩化カリは重要物質として統制をうけた。さらに,1944-52年の間は,にがりの専売制が施行された。その後塩業の合理化により,かなり多量のにがりが総合処理できるようになり,一時は,カルシウム塩(セッコウ,塩化カルシウム),マグネシウム塩(水酸化マグネシウム,マグネシア,炭酸マグネシウム,硫酸マグネシウム,塩化マグネシウム,金属マグネシウム),カリウム塩(苦汁(くじゆう)カリ塩,カーナライト,塩化カリウム)および臭素が採取された。72年に日本の塩業が塩田法から全面的にイオン交換膜法に転換したが,これにともない,副生するにがり量も,塩1t当り塩田法の500lからイオン交換膜法の200lに減少した。しかし,製塩工場は年産17万tと大規模化し,1工場当りにがりの生産量も3万~4万klと増大した。また,にがりの組成も,塩田法では硫酸イオンが多かったが,イオン交換膜法ではその選択透過性のためカルシウムイオンが多くなるというように変わってきている(表)。現在では,他の資源と競合する関係で,主として臭素とマグネシウム塩類とが利用されているにすぎない。
執筆者:増沢 力
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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