塩化マグネシウム(読み)えんかまぐねしうむ(英語表記)magnesium chloride

日本大百科全書(ニッポニカ) 「塩化マグネシウム」の意味・わかりやすい解説

塩化マグネシウム
えんかまぐねしうむ
magnesium chloride

マグネシウム塩素の化合物。無水和物のほかに、二、四、六、八、十、12水和物などがあるが、常温では六水和物(単斜晶系)がもっとも安定である。天然にはビショファイトMgCl2・6H2Oとして、ドイツのシュタッスフルトに産出し、複塩の形でカーナリットMgCl2・KCl・6H2Oとして産出する。海水中にも含まれ、イオン交換膜法製塩工業から出るにがりの中に10から20%程度含まれる。日本ではこれを原料として水和物を製造している。無水和物は酸化マグネシウムを直接塩素と反応させても得られるが、通常は水和物の脱水によっている。この場合、空気中で加熱すれば、たとえば次のような反応が一部でおこるので純粋なものが得られない。


したがって、塩化水素気流中で加熱するとか、塩化アンモニウムを加えて脱水するとか、いろいろの方法がとられる。無水和物は無色結晶性粉末で、吸湿性があり、水、アルコールに溶ける。金属マグネシウムやマグネシアセメントの製造原料として重要である。六水和物は無色の結晶で、潮解性で水によく溶け、エタノールエチルアルコール)にも溶ける。水和物は豆腐凝固剤木材防腐パーチメント紙の製造、羊毛精製などに用いられる。

[鳥居泰男]


塩化マグネシウム(データノート)
えんかまぐねしうむでーたのーと

塩化マグネシウム
MgCl2
式量95.2
融点714℃
沸点1412℃
比重2.32(測定温度25℃)
結晶系六方

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「塩化マグネシウム」の意味・わかりやすい解説

塩化マグネシウム
えんかマグネシウム
magnesium chloride

化学式 MgCl2 。軟らかく,非常に潮解性の強い葉状固体。ゆるやかに熱すると 300℃で塩素を放出する。水素気流中で蒸留可能。水に易溶。通常は6水和物で,構造は [Mg(H2O)6]Cl2 であり,潮解性。 100℃で 2H2O を失う。熱すると分解して塩基性塩 Mg(OH)Cl となり,さらに強熱すると酸化物 MgO となる。にがりの主成分で,海水から食塩をつくる際の副産物として得られる。金属マグネシウム製造原料,木材の防腐剤,融雪剤,豆腐の凝固剤などに用いられる。

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