ニシキソウ(読み)にしきそう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニシキソウ」の意味・わかりやすい解説

ニシキソウ
にしきそう / 錦草
[学] Euphorbia humifusa Willd. var. pseudochamaesyce (Fisch.) Murata

トウダイグサ科(APG分類:トウダイグサ科)の一年草。茎は分枝しながら地をはい、長さ10~25センチメートル、細く紅色を帯び、葉の下面とともに白毛を疎生し、切ると白液が出る。葉は短い柄があって対生し、長楕円(ちょうだえん)形または倒卵状長楕円形で長さ0.7~1.5センチメートル、細かい鋸歯(きょし)があり、斑紋(はんもん)はない。托葉(たくよう)は小さい。7~8月、葉腋(ようえき)に杯状花序を数個ずつつける。腺体(せんたい)は横長の広楕円形で、花弁状の付属体がある。蒴果(さくか)は三稜(さんりょう)形で径約1.3ミリメートル、滑らかで毛はない。畑地道端に生える雑草で、本州から九州に見られる。ユーラシア大陸の温帯域に広く分布する。名は、茎の紅色と葉の緑色対比が美しいことによる。近縁種オオニシキソウコニシキソウなどがあるが、コニシキソウは蒴果に毛があり、葉に斑紋があるので区別できる。

[小林純子 2020年6月23日]

 ニシキソウの仲間はニシキソウ属Chamaesyceとして独立した属とすることもある。

[編集部 2020年6月23日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ニシキソウ」の意味・わかりやすい解説

ニシキソウ(錦草)
ニシキソウ
Euphorbia pseudochamaesyce

トウダイグサ科の一年草。アジア東部の暖温帯に広い分布をもち,日本でも北海道を除く各地や南西諸島小笠原諸島などで路傍や畑の雑草となっている。茎は根に近いところからふたまた,ふたまたと多数分れて,地面をおおうように伸び,紅色で,切ると白い液汁が出る。葉は対生し,長楕円形で,長さ5~15mmあり,表面は緑色,裏面は白緑色をしている。基部には線形で3深裂した托葉がある。夏から秋にかけて,枝の先や葉腋に赤紫色の花序をつける。この花序にはさらに数個の小さな杯状花序がつき,その中に数個の雄花と1個の雌花とがあって,鐘状の総包をもつ。果実は扁卵形の 蒴果となる。本種によく似ているコニシキソウ E. supinaは北アメリカ原産で,明治年間に渡来して日本各地に雑草として帰化している。やや小型なことと,葉の表面に暗紫色斑点があること,果実が卵球形で短毛が生えている点が異なる。

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百科事典マイペディア 「ニシキソウ」の意味・わかりやすい解説

ニシキソウ

トウダイグサ科の一年草。本州〜九州,東アジアに分布し,畑などにはえる。茎はよく分枝して地面をはい,切れば乳液が出る。葉は長楕円形で対生。7〜10月,葉腋に赤紫色の杯状花序を出し,小さな雌花と雄花をつける。口部には4個の楕円形の腺体がある。近縁のコニシキソウは葉の中央に褐色の斑点がある。明治中ごろ侵入した帰化植物で,近年はこちらの方がよく見られる。

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世界大百科事典(旧版)内のニシキソウの言及

【コニシキソウ(小錦草)】より

…止血などに使用されることがある。在来の畑地雑草であるニシキソウE.pseudochamaesyce Fisch.Mey.et Lallem.は葉に斑がなく,茎や果実に毛がなく,立ち上がる傾向があることによって区別される。本州,四国,九州に分布する。…

※「ニシキソウ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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