日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニセクズアナゴ」の意味・わかりやすい解説
ニセクズアナゴ
にせくずあなご / 偽屑穴子
solitary duckbill eel
[学] Nettastoma solitarium
硬骨魚綱ウナギ目クズアナゴ科に属する海水魚。熊野灘(くまのなだ)以南の太平洋岸、九州・パラオ海嶺(かいれい)、沖縄舟状海盆(しゅうじょうかいぼん)(トラフ)、台湾南部沖、ハワイ諸島などのインド洋・西太平洋、中部太平洋に分布する。体は円筒形で、尾部で側扁(そくへん)した細長いウナギ形。吻(ふん)は円錐(えんすい)形で細長く、くちばし状に突出する。前鼻孔(ぜんびこう)は吻端近くにあり、鼻管をもつ。後鼻孔は目の前縁の背面にあり、斜めに大きく開く。吻端に細長い肉質の突起がない。口は細長くて大きく、目の後方まで開く。上下両顎(りょうがく)および鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)に細かい円錐歯が列をなして並び、内側のものが大きい。舌は口底に付着していて見えない。鰓孔(さいこう)は三日月状で、体の側面に開く。側線はよく発達し、肛門(こうもん)前側線孔数は42~46。背びれは鰓孔の上方から、臀(しり)びれは体の中央部よりやや前方から始まり、体の後端まで伸びる。胸びれと鱗(うろこ)はない。体は淡褐色で、腹部は青暗色。尾部の後方3分の1の背びれと臀びれの両縁辺は黒い。全長50センチメートルほどになる。水深200~600メートルの大陸棚斜面の泥底にすむ。レプトセファルス(葉形(ようけい)幼生)期を経る。本種はクズアナゴに似るが、後種の後鼻孔が左右の目の後縁を結ぶ線上にあることで区別できる。属名のNettastomaは「アヒルの口」を意味する。
[尼岡邦夫 2019年11月20日]