日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニューロコンピュータ」の意味・わかりやすい解説
ニューロコンピュータ
にゅーろこんぴゅーた
neurocomputer
人間の脳などの神経細胞網(ニューラルネットneural net)をハードウェアあるいはソフトウェアで模擬したコンピュータをいう。従来のコンピュータにはない、状況に応じて自らの構造を変えていく自己組織能力をもつことが特長とされる。これにより、コンピュータに学習、認識、連想などの高度な機能を付与し、複雑な組合せ問題を解くシステム、学習モデル、並列エキスパートシステムなどが実現されている。ニューロン(神経細胞)モデルの研究は1940年代に始まったが、1961年ロージェンブラットFrank Rosenblatt(1929―1971)による神経細胞素子パーセプトロン(学習機械)、1982年ホップフィールドJohn Joseph Hopfield(1933― )によるLSI(大規模集積回路)化可能なアナログ・モデル、1991年ラメルハートDavid Everett Rumelhart(1942―2011)によるコネクショニスト・モデル(並列分散処理)の提唱により開発が加速された。すでに、学習機能を考慮した入力層、中間層、出力層の3層構造のものが、LSIプロセッサーの配列・接続によったシミュレーション型、アナログLSIによるニューロチップを利用したもの、発光素子と受光素子のアレイ間に空間変調素子を挟む方法のいずれかで実現されており、音声・画像のパターン認識・意思決定、ロボットなどの自己学習能力をもつシステム用にと期待されている。
[岩田倫典]