ニワゼキショウ(その他表記)common blue-eyed-grass
satinflower
Sisyrinchium atlanticum Bicknell

改訂新版 世界大百科事典 「ニワゼキショウ」の意味・わかりやすい解説

ニワゼキショウ
common blue-eyed-grass
satinflower
Sisyrinchium atlanticum Bicknell

路傍の,草丈の低い草地や芝生の中などに普通に見られるアヤメ科多年草。北アメリカ原産の帰化植物で,日本への渡来は1887年(明治20)ころと推定されている。茎は高さ10~20cm,扁平で狭い翼がある。葉は線形で幅2~3mm,縁には微小な突起があってざらつく。花は5~6月に咲き,茎の上部の2枚の苞葉の間から2~5個の花が散形状に出る。花柄は約2cm。花は淡紫色で,濃紫色の条がある。径1~1.2cm。花被は6枚あり,平開する。おしべは3本。花糸の下半部は合着し,黄色の腺毛を密生する。子房は下位で3室,熟すと蒴果(さくか)となる。蒴果は球形で径3~5mm,紫色を帯びて光沢があり,中には多数の種子がある。種子は径約0.8mm。

 ニワゼキショウ属Sisyrinchium(英名blue-eyed-grass)は北アメリカの乾燥地帯に適応して分化しているグループで,約100種が知られている。日本にはほかにアイイロニワゼキショウS.graminoides Bicknellが帰化している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニワゼキショウ」の意味・わかりやすい解説

ニワゼキショウ
にわぜきしょう / 庭石菖
[学] Sisyrinchium rosulatum Bicknell
Sisyrinchium atlanticum Bicknell

アヤメ科(APG分類:アヤメ科)の多年草。高さ10~20センチメートル。根は細く、多数ある。葉は2列に並び、剣状線形で先はとがり、幅約3ミリメートル。5~6月、茎頂緑色包葉の間から数本の花柄を出し、径約1.5センチメートルの6弁花を1個ずつ頂生する。花被(かひ)は外面に腺毛(せんもう)があり、長楕円(ちょうだえん)形で先はとがり、紅紫または淡紅紫色の脈がある。基部は黄色。北アメリカ原産で、明治中期に日本に入り、日当りのよい草地に生える。名は、全体が同じくアヤメ科のセキショウに似ており、庭などに生えることによる。

[清水建美 2019年5月21日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ニワゼキショウ」の意味・わかりやすい解説

ニワゼキショウ(庭石菖)
ニワゼキショウ
Sisyrinchium atlanticum; blue-eyed grass

アヤメ科の小型の多年草。北アメリカ原産で明治の中期に渡来し,最初は植物園で栽培されていたが,次第に広く観賞用に栽培されるようになり,現在では各地の芝地に野生状態で広がっている。高さ 10~20cmほどで,多数のひげ根を出し,茎は扁平で,茎の基部に線形の葉を叢生する。初夏,葉の間から花茎を数本出し,頂部に紫,白色あるいは白に紫の縞のある径1~2cmの小花を数個つける。花は朝に開花して1日で終る。果実は球形の 蒴果で熟すると開裂し,多数の細かな種子を飛ばす。このためしばしば雑草化する。和名は庭に生える石菖に似た植物の意である。

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