ネジバナ(読み)ねじばな

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ネジバナ」の意味・わかりやすい解説

ネジバナ
ねじばな / 捩花
[学] Spiranthes sinensis (Pers.) Ames var. amoena (M.Bieb.) Hara

ラン科(APG分類:ラン科)の多年草。根茎は短く、肥厚した根が数本束生する。葉は大部分根生する。4~8月、高さ10~40センチメートルの花茎の先に毛のある花序をつくり、小花螺旋(らせん)状に密に並べる。花は紅紫色で唇弁は白色。距(きょ)はない。日本全土の草地や崖(がけ)などに生え、都市の芝生にも多い。基本種ナンゴクネジバナは花序に毛がなく、沖縄、および東南アジアオーストラリアに広く分布する。名は、花序がねじれることに由来する。

 ネジバナ属は束生する多肉根、ねじれた花序、粉質の花粉塊などで特徴づけられ、熱帯から温帯に約100種分布する。

[井上 健 2019年5月21日]

文化史

江戸時代はモジズリの名でよばれ、『花壇綱目(かだんこうもく)』(1681)や『花壇地錦抄(かだんちきんしょう)』(1695)に栽培の記録がある。モジズリの名は、『伊勢(いせ)物語』の「みちのくのしのぶもぢずりたれゆゑに乱れそめにしわれならなくに」などに名のみえる忍捩摺(しのぶもじず)り(忍摺り)にちなみ、忍捩摺りのかすれた細かいもじり模様が、ネジバナの花のねじれて連なる状態に似ていることからつけられた。ネジバナがねじれるのは、つぼみが後ろ側に反転するからで、左巻き右巻きがある。その比率地域によって異なる。

[湯浅浩史 2019年5月21日]


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改訂新版 世界大百科事典 「ネジバナ」の意味・わかりやすい解説

ネジバナ
Spiranthes sinensis Ames.var.amoena Hara

日本全国の低地に最も普通に見られる小型の地生ラン。別名モジズリともいうが,ともにねじれた花序のようすを表す。根茎が短く,太く肥厚した根を束生する。葉は大部分ロゼット状に根生する。4~8月,高さ10~40cmの茎の先に花序を出し,右または左まきのらせん状に花を密につける。花は桃紅色で,唇弁は白色,花被は集合して筒状になる。距はない。日本全国の草地,湿地,崖などに生育し,都市の芝生の中にも多い。山草として栽培されることもある。本州付近のものは植物体に毛が多く,変種として区別される。無毛の個体は琉球以南に多く,ナンゴクネジバナとして区別される。種全体としては東アジア,マレーシア,オーストラリアからポリネシア西部まで広く分布する。ネジバナ属Spiranthes(英名lady's-tresses,pearl twist)は束生する多肉根,ねじれた花序,粉質の花粉塊などで特徴づけられ,約100種が熱帯から温帯にかけて分布する。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ネジバナ」の意味・わかりやすい解説

ネジバナ(捩花)
ネジバナ
Spiranthes sinensis; lady's tresses

ラン科の多年草。別名モジズリともいう。アジアの温帯から熱帯およびオーストラリアに分布する。芝生や日当りのよい草地にごく普通に生える。葉は大部分が根生で広線形,長さ 10cm,幅 8mm内外となる。5~8月頃,10~40cmの茎を伸ばし,螺旋状にねじれた穂状花序をつくり,長さ4~8mm,淡紅色まれに白色の花を横向きに多数つける。

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百科事典マイペディア 「ネジバナ」の意味・わかりやすい解説

ネジバナ

モジズリとも。北海道〜九州,東北アジアに分布し,芝生など日当りのよい草地にはえるラン科の多年草。太い根があり,茎は高さ10〜40cm,下半分に広線形の葉を数枚つける。晩春〜夏,茎の上部に長さ5mm内外で淡紅色の多数の花を1列にらせん状につける。奄美以南のものは花序に毛がなく,ナンゴクネジバナとして区別される。

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