ネストル(その他表記)Nestōr

デジタル大辞泉 「ネストル」の意味・読み・例文・類語

ネストル(Nestōr)

ホメロス叙事詩イリアス」「オデュッセイア」の中で活躍するピュロスの王。トロイ遠征軍中の最年長で、さまざまな助言を行う。

ネストル(Nestor)

[1056~1114]ロシア修道僧。ロシア最古の年代記編者

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精選版 日本国語大辞典 「ネストル」の意味・読み・例文・類語

ネストル

  1. [ 一 ] ( Nestor ) ギリシア神話の人物。ホメロスの叙事詩「イーリアス」「オデュッセイア」の中に登場するピュロスの王。トロイ戦争では、ギリシア軍の最長老としてアガメムノンの下で活躍した。
  2. [ 二 ] ( Njestor ) ロシアの学僧。「キエフ年代記」の編者の一人。(一〇五六‐一一一四

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改訂新版 世界大百科事典 「ネストル」の意味・わかりやすい解説

ネストル
Nestōr

ギリシア伝説のピュロス王。高齢の身にもかかわらず,2人の息子とともに90隻の軍船を率いてトロイア戦争に参加,みずからも戦場に出るかたわら,総大将アガメムノンアキレウスの争いの仲裁に努めるなど,ギリシア軍の最長老として時宜に応じた助言・忠告を与えた。饒舌家で,その話はとかく若い時分の武勇談に傾くきらいはあるものの,だれからも尊敬される老人として,ホメロスの叙事詩に描かれている。歴史時代のペロポネソス半島西部には,ピュロスの名をもつ地が3ヵ所あり,パウサニアス(2世紀)の《ギリシア案内記》はメッセニア地方のピュロス(現在のピロス,別名ナバリノより少し北)をネストルの居城地と記しているが,1939年,アメリカの考古学者ブレーゲンC.Blegenが現ピロスの北方約20kmにあるエパノ・エングリアノスの丘に広大なミュケナイ時代の宮殿址を発見し,いまではここがネストルのピュロスと想定されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ネストル」の意味・わかりやすい解説

ネストル
ねすとる
Nestor

ギリシア神話のピロス王。アガメムノンとアキレウスの間を調停するなど、血気盛んな諸将の仲裁役として本領を発揮した。父オデュッセウスの行方を尋ねるテレマコスを歓待して懐旧談を語ったり、おりに触れて2人の息子とともに参戦したトロヤ戦争の自慢話に興ずるなど、人間の三代を生きたお人好しの老将として、ホメロスではかなり好意的に描かれている。親しみやすい人物像のゆえか、アルゴナウタイの遠征やカリドンの猪(いのしし)狩りに参加したなど、後世にはさまざまなエピソードが創作された。

[伊藤照夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ネストル」の意味・わかりやすい解説

ネストル
Nestor

ギリシア神話の英雄ネレウスの子で,父の跡を継ぎ,ピュロスの王となり,アポロンから常人の3倍の寿命を与えられ,トロイ戦争にギリシア方の最長老として,息子のアンチロコスとともに 90艘の船団を率いて参加し,アガメムノンとメネラオスのよい相談相手として重要な貢献をした。アンチロコスはメムノンに打取られたが,ネストル自身は,トロイの陥落後,無事帰国し,ピュロスを平和のうちに統治し続けたとされる。

ネストル
Nestor

[生]1056頃.キエフ
[没]1113.10.27. キエフ
ロシアの修道士,年代記編者。古代ロシア年代記の傑作といわれる『過ぎにし歳月の物語』 Povest' vremennykh let (『原初年代記』) の編纂者とみなされている。

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百科事典マイペディア 「ネストル」の意味・わかりやすい解説

ネストル

ギリシア伝説のピュロス王。トロイア遠征軍に参加した英雄のうちの最年長で,ホメロスによって饒舌(じょうぜつ)ながら親切で温和でユーモアのある老人として描かれている。

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