生鮮品を含む食品・日用品などスーパーマーケットの店頭にある商品をインターネットなどで受注し、即日を含め短時間で宅配するサービス。インターネットとスーパーマーケットを組み合わせた和製英語で、インターネット通信販売(ネット通販)の一種である。最寄りの店舗から届ける「店舗出荷型」と、複数店をカバーする物流拠点・倉庫から直接届ける「センター出荷型」がある。顧客の指定時間帯に届ける方式が多いが、自転車などによる配達専門事業者と提携し注文から1~2時間以内に届けるクイックコマース(即配)方式もある。
配送料は1回当り100円から600円台であるが、一定額(1500~1万円程度)以上購入すると配送無料になる場合がある。家事にあてる時間の限られた働く主婦や育児世代、重い荷物の持ち運びが困難な高齢者らの利用が多い。共働き世帯の増加や高齢化の進展に加え、「巣ごもり消費」(通販などを利用した在宅型消費)の増加もネットスーパーの利用を後押ししている。事業者にとっては、顧客の住所、性別、年齢、家族構成、購入日時などの属性ごとにどのような商品が売れているかを分析し、売れ行きに応じて価格を柔軟に変えるなどマーケティングに生かせる利点がある。一方、数万点を超える品目ごとのきめ細かな管理や配達・再配達にコストがかさむため、ロボットや人工知能(AI)の利用などによるコスト削減が課題となっており、ドローンによる配達実験も始まっている。スーパーマーケット業全体の市場規模が伸び悩むなか、民間のマーケティング会社による調査では、日本のネットスーパーの市場規模は2023年(令和5)に3000億円を超えたとされる。とくに雨天時、ガソリン代の高騰時、感染症流行時に利用が増える現象が確認されている。
1999年にイギリスのスーパー最大手のテスコが世界で初めて本格的なサービスを開始した。アメリカでは通販大手のアマゾン・ドット・コムが傘下スーパーなどの生鮮食品の宅配を始め、中国ではネット通販大手のアリババ集団がネットスーパー事業を強化するなど、世界でIT(情報通信)、小売り、物流企業の連携による顧客囲い込み競争が起きている。日本では2000年(平成12)にスーパー大手の西友が試験的に始め、その後、ITの普及に伴い、大半のスーパーが参入した。西友がIT大手の楽天と、同じくスーパー大手のイオンはイギリスのネットスーパー専業のオカドグループと提携したほか、スーパーのライフコーポレーション、バローホールディングス、成城石井、アークスなどはアマゾン・ドット・コムとそれぞれ提携するなど、日本でも業種を越えた合従連衡(がっしょうれんこう)の動きが広がっている。
[矢野 武 2024年4月17日]
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