ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ノルム」の意味・わかりやすい解説
ノルム
norm
となる。 x1,x2,…,xn はベクトル x の成分である。このノルムの定義は,n=2 および n=3 の場合には,ピタゴラスの定理によって導いた,平面上および空間内の直観的大きさの概念と一致する。すなわち,常識的な大きさの考え方を拡張したものである。ノルムには次の諸性質がある。 (1) x・x≧0 だから右辺の平方根は常に存在し,∥x∥≧0 である。 x≠0 ならば ∥x∥≠0 である。すなわち ∥x∥=0 となるのは x=0 のときに限る。 (2) a をスカラー,|a| を a の絶対値とするとき,∥ax∥=|a|・∥x∥ である。 (3) また2つのベクトルを x ,y とするとき,∥x+y∥≦∥x∥+∥y∥ である。これは三角不等式として知られている。このような性質は,ピタゴラスの定理による長さ以外にも,∥x∥1=|x1|+|x2+…+|xn| とか ∥x∥∞= max {|x1|,|x2|,…,|xn|} でも満足する。それで,これらの場合も,一般にノルムという。さらに
で距離を定義すると,ノルムの定義された n 次元ベクトル空間は,距離空間になる。ノルムは無限次元のベクトル空間である関数空間にも定義することができる。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報