ハイム(読み)はいむ(英語表記)Albert Heim

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハイム」の意味・わかりやすい解説

ハイム(Albert Heim)
はいむ
Albert Heim
(1849―1937)

スイス地質学者。チューリヒに生まれ、チューリヒおよびベルリン大学で学ぶ。のちチューリヒ大学教授、地質調査所所長となった。スイス、とくにアルプスの地質の研究を行い、アルプスの地質構造解明に指導的役割を果たした。研究の結果、そこに大規模な横倒し褶曲(しゅうきょく)、おしかぶせ断層に伴う大規模なナップ構造があるのをみいだした。この成果は、世界の褶曲山脈の地質構造解明のモデルとなった。息子のアーノルドArnold Heim(1900―1951)などとともに著した『スイスの地質』(1916~1920)は地層分布、地質構造の正確な記述によって今日も重視されている。

[木村敏雄]


ハイム(Georg Heym)
はいむ
Georg Heym
(1887―1912)

ドイツの詩人。大学で法学を修め司法官試補になったが、すぐ勤めを辞めて文学活動に専念。ヒラーを中心とした前衛的な作家集団「新クラブ」の有力メンバーとして旺盛(おうせい)な詩作活動に入り、劇作などにも意欲をみせていたが、冬のある日スケートに出かけて溺死(できし)、短い生涯を閉じた。最初は印象派および新浪漫(ろうまん)派の影響下にあったが、やがて「目覚めた幻想力」、異常な感覚力により都会の醜悪、病苦、孤独、死の恐怖をとらえ、暗澹(あんたん)たる終末風景あるいは黙示録的光景を幻視的に描き出すという独自の詩風を築いた。暗喩(あんゆ)言語、擬人法、神話的形象を駆使した手法は、彼を初期表現主義における独特の存在にしている。彼にとって詩作は、歴史的過程における現実のあらゆる局面、すべての具体的行動を全面的に否定し続ける行為であった。おもな作品は、詩集『永劫(えいごう)の日』(1911)、戯曲アトランタ』(1911)、遺稿詩集『生の影』(1912)など。現在は全集も出ている。

[内藤道雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハイム」の意味・わかりやすい解説

ハイム
Heim, Karl

[生]1874.1.20. ウュルテンベルク
[没]1958.8.30. テュービンゲン
ドイツの福音主義的神学者。ルター主義のなかの敬虔派に属する。 1914年ミュンスター,20年テュービンゲンの各大学組織神学教授。自然科学的思惟と対決し,敬虔派の信仰を現代世界に生かそうとした。その結果,二元的対立図式に代り,「対象界-我-汝-神」という,次元を異にしつつ,弁証法的に相関している次元的思考図式を提示。主著『世界の未来像』 Das Weltbild der Zukunft (1904) ,『福音的キリスト教の本質』 Das Wesen des evangelischen Christentums (26) ,『信仰と生』 Glaube und Leben (28) ,『福音的信仰と現代の思想』 Der evangelische Glaube und das Denken der Gegenwart (34~52) 。

ハイム
Heim, Albert

[生]1849.4.12. チューリヒ
[没]1937.8.31. チューリヒ
スイスの地質学者。銀行家の子。チューリヒ大学およびチューリヒのスイス連邦工科大学卒業。同大学地質学教授 (1873) 。チューリヒ大学地質学教授 (75) 。スイス地質委員会会長。アルプス山脈の地質学研究に一生を捧げ,特にスイスアルプスの大規模な押しかぶせ構造を詳しく研究し,これを中心に造山論を展開した。収縮説に基づく古典的造山論の泰斗として知られる。主著『スイスの地質』 Geologie der Schweiz (2巻,1916~22) 。

ハイム
Heym, Georg

[生]1887.10.30. ヒルシュベルク
[没]1912.1.16. ベルリン,ハーフェル湖
ドイツの詩人。検事の息子に生れ法律を学んだが,ベルリンで若い作家グループと接触するうち文学に転じた。ボードレール,ランボー,ヘルダーリーンの影響を受け,都会の悲惨を虚無的に歌った。『永遠の日』 Der ewige Tag (1911) などの詩集は,初期表現主義の最も重要な成果に数えられている。スケートをしていて水に落ち,不慮の死をとげた。

ハイム
Haym, Rudolf

[生]1821.10.5. グリュンベルク
[没]1901.8.27. アントン
ドイツの哲学者,文芸史家。 1868年ハレ大学教授。哲学的にはドイツ観念論,文学的にはドイツ・ロマン主義の研究にすぐれ,哲学史と文芸史の統一を試みた。主著『ヘーゲルとその時代』 Hegel und seine Zeit (1857) ,『浪漫派』 Die Romantische Schule (70) 。

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