改訂新版 世界大百科事典 「アルベルト」の意味・わかりやすい解説
アルベルト(ザクセンの)
Albert von Sachsen
生没年:1316ころ-90
中世のスコラ哲学者。ヘルムシュテットの富裕な家に生まれ,プラハで学び,パリに遊学して学士号を得た。パリ大学学芸学部教師として名声を博し,1353年に同大学の学長となった。62年ころパリを去り,アビニョンの教皇庁でウルバヌス5世に仕えた。ウィーン大学の創設に参画し,65年初代総長となったが1年で辞し,66年ハルバーシュタットの司教に任ぜられ,生涯その職にあった。彼の著作は自然学,数学,論理学にわたる。パリ時代の師ビュリダンのインペトゥス理論を広めるとともに,投射体軌道の一部分が曲線になることをインペトゥスの合成から新たに説明した。またブラドワディーンの運動式を紹介した《比の論考》も広く読まれ,アリストテレスの諸著への注釈や論理学教科書も書いた。独創性は少ないが,14世紀の学問的成果を後代に普及させた功績は大きい。
執筆者:高橋 憲一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報