日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハイラックス」の意味・わかりやすい解説
ハイラックス
はいらっくす
hyrax
哺乳(ほにゅう)綱ハイラックス目ハイラックス科に属する動物の総称。イワダヌキ(岩狸)ともいう。また、1科で目を構成し、ハイラックス類ともよばれる。この科Procaviidaeの仲間は、草食性の原始的な有蹄(ゆうてい)獣で、前肢に4指、後肢に3指があり、平づめをもつ。橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃくこつ)、脛骨(けいこつ)と腓骨(ひこつ)がそれぞれ分離しており、ゾウの足に似ている。歯式は
の合計34本で、上顎(じょうがく)の門歯は無根で伸び続け、分類学的にはゾウに近いものと考えられている。体は全体に毛で覆われ、背には背腺(はいせん)を有し、この周囲の被毛は興奮すると起立する。胃は単一で小腸は長く、盲腸と結腸の一部に1対の盲嚢(もうのう)膨大部を有する。体長30~60センチメートル、体重2~6キログラム。中近東とアフリカに分布し、岩地、森林に、小さな群れや、種類によっては150頭にも上る群れで生活している。多くは日中活動するが、キノボリハイラックス属に含まれる種は夜行性である。妊娠期間は225~250日で、1回3頭ほどの出産がみられ、生まれた子は数時間でほかの動物から逃げることができる。
ハイラックスは分類的には不確定なところが多く、2属あるいは3属3~11種に分類される。ハイラックス属Procaviaにシリアハイラックス、ケープハイラックスなど5種、イワハイラックス属Heterohyraxにキボシイワハイラックスなど3種、キノボリハイラックス属Dendrohyraxに3種があるとする、などがその一例である。
[齋藤 勝]